ひとつ屋根の下、憧れモテ王子は甘い愛を制御できない。


「こんな近くで何年も白井さんの幼なじみしてたはずなのに、何にも知らないんだね」


「なっ、なに。もしかしてあんた、初花のこと───」


「うん。好きだよ」


あんまり爽やかに言うんだもん。
どこまでドキドキさせたら気が済むんですか!!


「だから、彼女といて楽だと思ったこともない。俺は、白井さんといるとずっと心臓忙しい」


「……っ」


広夢がなぜか悔しそうに顔を歪めて、織くんは続けた。


「幼なじみだからなに?白井さんのこと、気安く扱わないでくれるかな」


吉村さんに壁ドンしながら怒ったときの倍はある鋭い声で織くんがそう言って。


広夢だけじゃなく、私までびっくりしてしまった。


「……ごめん白井さん。寒いよね。中入ろうか」


「あっ、う、うんっ」


織くんが私にフワッと笑いかけて。
私は呆気にとられている広夢に「じゃあね」とだけいって、部屋の中に入った。

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