ひとつ屋根の下、憧れモテ王子は甘い愛を制御できない。

ダメだ、織くんの近くにいると日常生活に支障が出てしまう。


トースト、トースト、ジャムジャムジャム……。


どうにか精神を落ち着かせようと、とりあえず今口にしている朝ごはんを心の中で唱えていると、


「初花ちゃん、お家からはバス通学だったって聞いてたけど」


オレンジジュースのおかわりを入れてくれた愛菜さんがそう聞いてきた。


「はいっ!」


「そっか。うちからは歩いて15分くらいだから、普段よりゆっくりしても間に合うと思うわよ」


「あ、そうなんですね……!あの満員のバスに乗らなくていいんだ……」


嬉しくて思わず心の声が出ちゃう。


いつも朝は人に押しつぶされて嫌だったんだ。


「白井さん、あと30分くらいで出ようか」


「うんっ」


織くんの優しい声が隣からして、私は元気よく返事をする。


なんて……なんて優雅で爽やかな朝なんだろうか。

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