ひとつ屋根の下、憧れモテ王子は甘い愛を制御できない。
「夕飯の買い物、一緒に行ってくれないかなって。今日、愛菜さん、残業で遅くなるみたいだから」
「……あ、愛菜さん、残業!」
『ちょっと、付き合ってくれないかな?』
そのセリフに、一瞬ありえないことを考えてしまった自分が恥ずかしい。
穴があったら入りたい。いや、今から自分で掘って入る。
「うん。時々あるんだよね。10時過ぎても帰ってこないとか」
「わぁ……そうなんだ。大変だね」
「うん。まあよくあることだから。……白井さん、一緒に行ってくれる?」
「はいっ、行くです!」
前のめりで即答してすぐに支度を始める。
あの織くんに誘ってもらったんだ。
断ったらバチが当たる。
9月中旬。
夜は昼間よりも肌寒くなってきたから、一枚パーカーを羽織って。
私は、織くんとふたりでうちを出た。