ひとつ屋根の下、憧れモテ王子は甘い愛を制御できない。
「……織くん、あの、今日、弁当届けてくれてありがとう。……それと、話し合わせてくれたのも、すごく助かった」
織くんとふたり、並んで歩き出してから。
改めて、今朝のお礼を言うけど。
「……」
織くんからの返事がない。
まずい……。
やっぱり、急にその場しのぎであんなこと言ったの、不愉快だったかな。
ああダメ、嫌われたくないよ、織くんには!!
今更反省して、口を開く。
「……あ、なんか、私、やな感じだったよね……ほんとごめ───」
「呼び方……」
「えっ、」
織くんの足が止まって、その顔がこちらを向いた。
「……っ、」
街灯の灯りに照らされた織くんの顔があんまりにも綺麗で、息をのむ。
「……柳瀬、になってた」
「そ、それは……」
だって。『織くん』なんてみんなの前で馴れ馴れしく呼んじゃ、みんなから白い目で見られると思って……。
「……うちに白井さんが住んでること、みんなに隠したい?」
名前の呼び方のことを説明しようとしたら、さらに織くんが聞いてくる。