ひと夏の、
「──で、デコに冷えピタ貼って待ち合わせに来た、と」


喧騒を離れたベンチに座らされた私は、目の前で仁王立ちする朔良に力なく頷いた。顔は怖くて見られないので、視線は膝の上のリュックに固定だ。


「あほ」


容赦なく切り捨てられて、更に頭を垂れる。


「連絡すれば俺だって病人を遊園地なんかに来させなかった」

「遊園地なんかって……」

「遊園地なんかだよ」


朔良は厳しい。
私が朔良を困らせたから当たり前なんだけど、朔良にとったら1ヵ月ぶりのデートも“遊園地なんか”の一言で済ませられるんだ、と思ったら、反発心がむくむくと湧き上がってきた。
私は膨れっ面で無言を貫く。

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