ひと夏の、
やってしまった。


肘を伝う冷たい感覚に、血の気が引いていくのを感じた。
さっきまで甘ったるい声や手拍子が響いていた周囲は静まり返って、自分に刺さる視線が痛い。痛いからいっそ救急車で運ばれて、この場から消えてしまいたかった。


というか、初めからこんなところ来なければよかった。そうすれば、目の前の男に麦茶をぶっかけるなんて愚行を犯さずに済んだのだ。

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