キミに一条の幸福を
 傘は持っているけれど、こんな石段の途中でとかついてない。


 折り畳み傘を出して何とか差す。

 上を見ると、自分より先に傘を差し終えていた晴樹がまた石段を上り始めていた。


 芽衣子もため息をつきつつ、上り始める。

 石段はかなり上ってきていたし、終わりが見えてきていたので上った方が楽だと思ったからだ。


 登り切った頃には雨も強くなっていて、神社の軒下を借りて雨宿りをする。

 傘を差していたとはいえ多少は濡れてしまっていた。


 制服が肌に張り付く感じが不快で、イライラしながら芽衣子は晴樹に聞く。

「で? ここまで来て何がしたかったのよ?」

「いや、したいっていうか……見たいものがあってな」

「なによその見たいものって」

「それはまだあるか分からない」

「はぁ?」

 要点を言わない晴樹にさらにイライラする。

 淡々としている様子もイライラ増長の原因だ。


 そんな芽衣子に晴樹はため息をつく。

「お前、最近イライラしすぎ」

「なっ!」

「気持ちはまあ、分からなくもないけどな」

「……」


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