キミに一条の幸福を
 だが、それから徐々に雨足が弱まり傘を必要としないほどの小雨になる。


「!」

 すると突然晴樹が軒下から飛び出て行った。

「え? 晴樹?」

 芽衣子は何事かと晴樹を追いかける。

 晴樹は街を見渡せる場所に来ていた。


 街の高台にある神社。

 晴れた日なら見晴らしもよく、すがすがしい気分になれたかもしれない。


 だが今はまだ小雨がぱらつく雲が頭上に広がっていた。

 こんな天気の日に何を見たいと言うのか……。


「ちょっと晴樹、いったい何を――」
「あった」

「え?」


 何を見たいのか。

 何をしようとしているのか。

 それを問おうとした言葉を遮り、晴樹は右手を前に伸ばして何かを指差した。


「ほら、あれ見ろよ」

 晴樹の言葉に顔を上げ指し示す方を見る。


「――っ!」


 息を……呑んだ。

< 5 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop