キミに一条の幸福を

 影を落とす雲の切れ間から、光が漏れている。

 光の柱が放射状に地上へ降り注ぎ、美しい光線を形作っていた。


 まるで、天の使いがそこを通って降り立ったかのような光景。


 しかもはじめは一つだったそれが、二つ、三つと増えていき……最後には五つの光線が出来る。

 まるで宗教画にでもありそうな光景に、芽衣子は“感動”の二文字しか頭に浮かべることが出来なかった。



「……すげぇな……」

 隣で晴樹が呟く。

「一つ見れればいい方だと思ったけど、こんなに見れるとは……」

「……これが晴樹の見たかったもの?」

 素晴らしい光景に目を逸らすことも出来ず、言葉だけを投げ掛けた。


「ああ……。お前に見せたかったものだよ」

「え?」

 予想外の言葉に驚いた芽衣子は晴樹を見る。

 そんな芽衣子を晴樹は優しく見下ろした。


「あれ、“天使のはしご”って言われてるんだ」

「“天使のはしご”……」

 繰り返し、とてもピッタリな名称だと思う。

「“天使のはしご”はさ、見ると幸せになれるって言われてるんだ」

「そうなんだ。……確かに幸せになれそう……」

 そうしてまた光差す街に視線を戻した。

 この光景を刻み付けるように見入る。

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