エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
ウフフと笑ってお腹を撫でる友里に、雅樹が嘆息する。

「強いな。友里はもうしっかり母親なんだな。尊敬する」

褒められた友里は頬を染めた。

(弱かった私が少しは強くなれたのかな。そうだとしたら、この子たちのお陰……)



時刻は十一時二十分。

手術室にホギャホギャと産声が響いた。

(あ、生まれた……)

下半身は麻酔がかかり、身動きが取れない状態で友里は産声を聞いていた。

なんとも言葉にできない感動が込み上げて、目に涙が溢れる。

「香坂さん、赤ちゃん出ましたよ。はい、二人目も。元気元気」

タオルに包また双子をベテランの助産師が両腕に抱っこして、友里の顔の横に連れてきた。

「お母さんだよ。あら、女の子の方はもう寝ちゃった。男の子の方が少し大きいね」

双子は男女で、男の子が二千四百九十グラム、女の子が二千四百十グラムであった。

多胎児は小さく生まれてくるそうだが、友里の子供たちはほぼ標準であるという。

それでも友里の目には、小さくて今にも壊れてしまいそうなほど頼りなげに映る。

友里が指先でそっと頬に触れると、男の子も泣くのをやめて眠りについた。

「可愛い……」

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