エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
「お母さんだってわかったみたいね」

対面はほんのわずかな時間だけで、双子は新生児室へと連れられていく。

それを目で追いながら、友里は心の中で語りかけた。

(私の赤ちゃんたち。お母さんが守ってあげるからね……)



縫合が済んだら友里は回復室へと移された。

体には心電図のモニター、自動血圧計、足の血栓防止の医療機器や点滴、その他にも色々と管に繋がれている。

今夜はここで経過を観察し、特別室に戻れるのは明日の昼頃らしい。

「香坂さん、ご家族を呼んできますね」

友里の身の回りをテキパキと整えてくれた看護師が、回復室を出ていく。

そして雅樹が入ってくると思いきや――。

「友里! よく頑張った」と上機嫌な声がして、入ってきたのは父であった。

どうやら手術中に駆け付けたらしい。

「お父さん……」

親子の情はあっても、友里はいつでも威圧的な父が苦手である。

けれども友里が妊娠してからというもの、父はなにかと娘を気遣ってくれる。

子供の服やおもちゃを手土産に友里を見舞い、生まれる前からすっかり孫に甘いおじいちゃんの顔をしていた。

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