エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
「痛む時は我慢せず、痛み止めを服用して。その方が動けるから、結果として治りが早い」

「はい。そうします」

「その痛みを代わってあげたいな。なにもできなくてすまない」

「そんなことないですよ。今日は付き添ってくれて心強かったです」

そのような会話をしていると、赤ちゃんが連れられてきた。

「香坂さん、お待たせ。一時間経って問題がないので保育器から出ましたよ。ふたりとも元気。今は寝てるけど、さっきまで泣いてたの」

助産師が、寝ている友里の両脇にひとりずつ、赤ちゃんを置いてくれる。

(初めての抱っこ。起きてしまわないかな? 温かい。嬉しい……)

まだ肌はふやけて、どっちに似ているかはわからないが、双子はそっくりな顔をしている。

大きさが少し違うので、性別を確認しなくても見分けはつきそうだ。

「お母さんよ」

友里が指先で女の子の唇に触れると、乳首だと思ったのか口が開く。

男の子の手に触れると、意外と強い力で指を握ってくれた。

「可愛い……」

友里はフフッと笑い、雅樹を見る。

ベッドサイドに立ち尽くしている雅樹は、眉間に深い皺を刻んでいた。

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