エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
そして雅樹の女性人気の高さについて考えた。

雅樹は外来か手術に入っていることが多く、病棟に長く滞在しない。

来ても先ほどのように病室を回診している。

脳神経外科には他に三人の医師がいるけれど、ナースステーション内での滞在時間は、雅樹が一番短いのではないだろうか。

それにも関わらず、そして勤め始めたばかりだというのに、彼が若い看護師たちに恋愛対象として狙われていることに気づいていた。

それくらい、あからさまであるからだ。

(私も、香坂先生はかっこいいと思うけど……)

容姿端麗で優秀な脳外科医。きっと将来も有望だろう。

それでも友里は看護師たちのように、彼を恋愛対象に捉えることはできそうにない。

(怖そうな人……)

彼が誰かを怒鳴ったり叱ったりしている姿を見たわけではない。

それでも必要なことしか口にせず、仕事以外に興味がなさそうな態度や、クールすぎる話し方に苦手意識を感じてしまう。

教わったことを書き留めたメモ帳をパラパラとめくりながら、雅樹について考えていたら、「友里さん、ごめんなさい」と山内が戻ってきた。

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