エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
ナースステーション内を見回しつつ、「あの、さっきのことは……」とバツが悪そうにしている彼女に、友里は首を横に振った。

「山内さんは悪くないですよ。気にしないでください。私も気にしないようにしますから」

対立しているわけではないが、友里と看護師たちの板挟みにしてしまったら申し訳ないと思い、友里は少しもこたえていない風を装って微笑んで見せた。

すると山内がホッとしたように頬を緩める。

「よかったです。友里さんがサッパリしていて」

それからは、実際にパソコンを使って仕事を教わる。

(仕事は楽しい。大変そうなのは、人間関係の方。お嬢様というレッテルを剥がすには、どうすればいい? 早く仕事を覚えて、一人前のクラークになれたら、私という人間で評価してくれるのかな……)


十二時になり、昼休憩に入る。


お弁当を手に向かった先は屋上だ。

重く軋むドアを開けると、強い日差しが肌を刺す。

夏も終わりそうだとはいえ、日中は三十度越えの日もある。

今も三十度近くありそうだ。

< 14 / 121 >

この作品をシェア

pagetop