エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
「友里ちゃん、悪いけど517号室の新患さんの病棟案内、お願いできる? バタバタしていてまだなにもやってないの」

「わかりました。病衣のサイズも聞いて出しておきますね。食事伝票も書いておきます」

「助かるー。いつもありがとね。ほんと友里ちゃんいい子」

看護師たちの忙しさは見ていればわかる。

分単位どころか、秒単位で動いている時もあるくらいだ。

友里でもできることは代わりにやってあげたい……そういう姿勢も、同じ病棟で働く仲間として受け入れてもらえた理由だろう。

友里は新患の待つ病室へと急ぎながら、口角を上げる。

役立てるのが嬉しく、必要とされていると感じて心が満たされた。

この気持ちは自宅にいては味わえない。

(お母さん、こういうことでしょ? 背中を押してくれてありがとう。私、働きに出てよかった……)



今日の昼は、真由美と職員用の食堂に行き、楽しいランチの時間を過ごした。

そして、心地よい疲労と充実感の中で一日の勤務を終えようとしてる。

ナースステーション内にいる看護師たちは、夜勤者への申し送りの最中だ。

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