エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
君は俺の妻

「それで、それで?」

興味津々に友里から新婚生活の話を聞きだしているのは、真由美である。

三月に入ったばかりの平日の昼休み、ふたりは資料室に来ていた。

地下の端にあるここは、暖房が入っていないためかなり寒い。

制服の上にカーディガンを羽織っても耐えられず、コートまで着込んでいる。

八列のスチールラックの棚に、電子カルテに代わる前の紙のカルテや、会議の議事録、事務関連の記録物などが保管されている。

人の出入りは滅多になく、埃っぽいこの部屋に、友里と真由美はパイプ椅子を持ち込んで話をしていた。

入籍して五日が経ったが、友里と雅樹の結婚は公にされず、友里は院内で旧姓のまま通している。

そうしてほしいと友里が雅樹にお願いし、雅樹から父に適当な理由をつけて話してもらった。
< 35 / 121 >

この作品をシェア

pagetop