エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
想いは同じ
季節は初夏。
梅雨入りはもう少し先だが、今日の最高気温は二十八度予報で、今年の夏も暑さが厳しい予感がする。
友里が結婚してから三か月半ほど経っていた。
雅樹は友里が楽しんで働いていることを理解して反対しないので、友里は今も病棟クラークとして勤務している。
十三時五分前に、真由美との昼食を終えてナースステーションに戻ってくると、看護師の久保田が声をかけてきた。
「友里ちゃん、悪いんだけど、522号室の後藤さんの食事量チェックお願いできる? 食べ終わるのに一時間以上かかる人だから、私の昼休憩に被るの」
「はい、わかりました。他に私にできることがあればやりますよ」
「本当? 助かるー。じゃあCT室から連絡きたら516号室の高島さんを連れて行って。歩ける人なんだけど、方向音痴でひとりじゃ辿りつけないって言うから」
CT室は増築された棟にあり、連絡通路を通らねばならないので確かにわかりにくい。
他の看護師にも同じようなことを頼まれたことが数回あり、友里は今回も快く引き受けた。
「高島さんをCT室ですね。わかりました。久保田さん、十三時になりましたよ。どうぞお昼休みに入ってください」
「お疲れ様です」と友里がにっこり微笑むと、急に抱きつかれた。
「天使! 友里ちゃん見てると癒されるんだよね。美人のお嬢様なのに使えるわ。ありがと」
(褒められたんだよね……?)
久保田はナースステーション横の休憩室へと入っていき、友里は自分の持ち場であるカウンター前に戻ろうと振り向いた。
すると、雅樹が入り口付近に立っていた。