エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
雅樹が欲しいのはこの病院であって、友里ではない。

それが今も友里を苦しめていた。


すると雅樹が抱きしめる腕に力を込め、想いを吐露する。

「なにより友里が大切だ。愛している」

友里は雅樹の胸に頬をあてた姿勢で、静かに驚いている。

(雅樹さんが今、愛してると言った気が……)

慌てて彼の胸を押し、顔を上げると、目を丸くしたまま問いかけた。

「私のこと、愛してくれるんですか?」

雅樹が眉を上げ、なにを当たり前なことを聞くのかという顔をした。

「友里を好きになったから、理事長に結婚させてほしいと頼んだんだ」

「えっ、お父さんが私を押しつけたのではなく?」

雅樹も驚いている。

無言の間が数秒流れ、先に口を開いたのは雅樹だ。

「誤解があったようだ。俺が欲しいのは友里。この病院を継いでほしいと言われた時に、友里をくれるならと条件をつけたんだ」

雅樹はどうして友里を好きになったのかを説明してくれた。

口調は彼らしい淡白なものであっても、真摯な想いは伝わる。

「岩陰に咲く百合の花のようだ」

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