5時からヒロイン
公務員合コンは思いのほか楽しかった。
真面目実食な印象だった公務員だけど、今の公務員はIT企業にも負けずとも劣らないルックスとセンスの持ち主だった。
「安定を選んだだけ」
と口をそろえて言った彼らは、今はプライベートを優先する人が多くて、休みやすいんだとも言っていた。
「薄給だけどね」
と苦笑いしたけど、やっぱり安定はお金を出しても買えない安心さがある。
今まで参加していた合コンは、彼氏欲しさと社長をあきらめなくちゃいけないという間で参加をしていたけど、気負いなく参加したのは初めてで、本当に楽しめた。
意外なことに社長に対する後ろめたさもなかったのは、新たな発見だった。
意外と楽しみなのだ、合コン終わりの二次会。ハズレだの当たりだっただのと品定めをする。
「意外と公務員やるじゃん」
「ちょっと公務員狙いにしない?」
マコはやる気満々。
「一人が楽しいっていう期間は過ぎたし、本気モードに入らないと、子供が産めなくなっちゃう」
そうなのだ、女は本当に大変。年とっても子供が出来る男とは違うのだ。
「マコは公務員に絞るの?」
彼氏と別れたマコとは違って、私は彼氏持ちの状態。
「あんたも、五つ星をキープしたまま、2番目を探せばいいのよ」
「そんなぁ~」
弥生は出来るかもしれないけど、私には無理。
「やれば出来るでしょう? 今日だって楽しそうだったじゃない?」
「そ、そう?」
楽しかったというよりも、発散したかったというほうが近い。
でも一つだけ怖いことがある。
「社長にフラれたらショック死するんじゃないかと思うんだけど」
「ばかか」
「試せばいいのよ、振る予定があるなら、なんでも買ってくれるはずだから、ねだりなよ。手切れ金代わりにね」
「ひどい!」
純情な私がひそかに想いを寄せていた相手を、そう簡単に嫌いになれるはずがない。それでも、別れたいと言われたらそうするしかないとも、思っている。
マコは超現実的な女だから、私の立場だったらカード限度額までねだりそう。
「なんだか、いろいろと考えたら動悸がしてきた。めまいもしてきた」
「沙耶は煩悩の塊だから、いろいろと考えてるんだもんね」
「むむむ……」
私の頭の中は、社長、社長、性欲……。
違う、仕事、社長、仕事、女子力向上。性欲なんてこれっぽっちもないわよ。
「エッチ、えっち、エッチ」
弥生は傷心の私をからかって楽しんだ。マコだって大笑いしてひどい。
「次の合コンも公務員よ! 分かった!?」
「はいはい」
こうなったら、海猿でも駐在さんでもどんとこいだ。
「ねえ、脱いだらすごいんですっていうの集めて」
やっぱり性欲の塊なのかな。
「任せて」
ほら、二人ともすごい身体が好きじゃん。そういえば、社長の身体もしまって無駄な肉はなかった。
ムキムキの筋肉じゃなくて、スポーツで言うなら、水泳選手みたいな体つき。いったいどうやって維持をしているのだろう。
ああ、あの胸板、細すぎずごつすぎないあの指。顎先から耳にかけてのラインとその首筋。うっとりするようなキレイな骨。
「なに想像してんのよ」
「うふ」
「懲りない子だね、まったく」
「抱かれたらわかるわよ。虜になるんだから」
「抱かれてもいいの!?」
マコが食いついた。
「まさかでしょ!」
まったく隙もあったもんじゃない。
好きになるって、好きになったほうが負けなのかな? フラれたらどうしようかと、怖くてしょうがないのがほんとのところ。
見合いだってしたわけじゃないし、付き合うことになっているわけでもない。私が早とちりをしているだけで、形ばかりの見合いをして断るつもりなのかもしれないじゃない?
全部良い方に考えるのは、やっぱり好きだから。好きになったもん勝ちじゃなくて、好きになったほうが負けなんだ。
だって、なんでも許せちゃうような気がしてしょうがないから。
「沙耶、考えていること顔に出てるぞ。まるで一人百面相よ」
こんなんでうまく戦えるか不安。
でも、私には弥生もマコもいる。弱気になったらケツを叩いてくれる友達がいる。
「よし、頑張る! ゴームキムキ!!」
「何なのよそれ」
上がったり、下がったりと私の気持ちは一定しないけど、それは彼氏として社長が安心させてくれないからだ。
何もかも社長が悪い。私を大切だと言ってくれたのに、こんな形で放り出すなんて打ち首獄門の刑だ。
真面目実食な印象だった公務員だけど、今の公務員はIT企業にも負けずとも劣らないルックスとセンスの持ち主だった。
「安定を選んだだけ」
と口をそろえて言った彼らは、今はプライベートを優先する人が多くて、休みやすいんだとも言っていた。
「薄給だけどね」
と苦笑いしたけど、やっぱり安定はお金を出しても買えない安心さがある。
今まで参加していた合コンは、彼氏欲しさと社長をあきらめなくちゃいけないという間で参加をしていたけど、気負いなく参加したのは初めてで、本当に楽しめた。
意外なことに社長に対する後ろめたさもなかったのは、新たな発見だった。
意外と楽しみなのだ、合コン終わりの二次会。ハズレだの当たりだっただのと品定めをする。
「意外と公務員やるじゃん」
「ちょっと公務員狙いにしない?」
マコはやる気満々。
「一人が楽しいっていう期間は過ぎたし、本気モードに入らないと、子供が産めなくなっちゃう」
そうなのだ、女は本当に大変。年とっても子供が出来る男とは違うのだ。
「マコは公務員に絞るの?」
彼氏と別れたマコとは違って、私は彼氏持ちの状態。
「あんたも、五つ星をキープしたまま、2番目を探せばいいのよ」
「そんなぁ~」
弥生は出来るかもしれないけど、私には無理。
「やれば出来るでしょう? 今日だって楽しそうだったじゃない?」
「そ、そう?」
楽しかったというよりも、発散したかったというほうが近い。
でも一つだけ怖いことがある。
「社長にフラれたらショック死するんじゃないかと思うんだけど」
「ばかか」
「試せばいいのよ、振る予定があるなら、なんでも買ってくれるはずだから、ねだりなよ。手切れ金代わりにね」
「ひどい!」
純情な私がひそかに想いを寄せていた相手を、そう簡単に嫌いになれるはずがない。それでも、別れたいと言われたらそうするしかないとも、思っている。
マコは超現実的な女だから、私の立場だったらカード限度額までねだりそう。
「なんだか、いろいろと考えたら動悸がしてきた。めまいもしてきた」
「沙耶は煩悩の塊だから、いろいろと考えてるんだもんね」
「むむむ……」
私の頭の中は、社長、社長、性欲……。
違う、仕事、社長、仕事、女子力向上。性欲なんてこれっぽっちもないわよ。
「エッチ、えっち、エッチ」
弥生は傷心の私をからかって楽しんだ。マコだって大笑いしてひどい。
「次の合コンも公務員よ! 分かった!?」
「はいはい」
こうなったら、海猿でも駐在さんでもどんとこいだ。
「ねえ、脱いだらすごいんですっていうの集めて」
やっぱり性欲の塊なのかな。
「任せて」
ほら、二人ともすごい身体が好きじゃん。そういえば、社長の身体もしまって無駄な肉はなかった。
ムキムキの筋肉じゃなくて、スポーツで言うなら、水泳選手みたいな体つき。いったいどうやって維持をしているのだろう。
ああ、あの胸板、細すぎずごつすぎないあの指。顎先から耳にかけてのラインとその首筋。うっとりするようなキレイな骨。
「なに想像してんのよ」
「うふ」
「懲りない子だね、まったく」
「抱かれたらわかるわよ。虜になるんだから」
「抱かれてもいいの!?」
マコが食いついた。
「まさかでしょ!」
まったく隙もあったもんじゃない。
好きになるって、好きになったほうが負けなのかな? フラれたらどうしようかと、怖くてしょうがないのがほんとのところ。
見合いだってしたわけじゃないし、付き合うことになっているわけでもない。私が早とちりをしているだけで、形ばかりの見合いをして断るつもりなのかもしれないじゃない?
全部良い方に考えるのは、やっぱり好きだから。好きになったもん勝ちじゃなくて、好きになったほうが負けなんだ。
だって、なんでも許せちゃうような気がしてしょうがないから。
「沙耶、考えていること顔に出てるぞ。まるで一人百面相よ」
こんなんでうまく戦えるか不安。
でも、私には弥生もマコもいる。弱気になったらケツを叩いてくれる友達がいる。
「よし、頑張る! ゴームキムキ!!」
「何なのよそれ」
上がったり、下がったりと私の気持ちは一定しないけど、それは彼氏として社長が安心させてくれないからだ。
何もかも社長が悪い。私を大切だと言ってくれたのに、こんな形で放り出すなんて打ち首獄門の刑だ。