5時からヒロイン
二人とも慰めているのか、落としているのか分からないような辛口評価。
「もうさぁ、誰でもいいとは言わないけど、分相応の男にしなよ」
さすが弥生、的を得ている。
「好きになった人がたまたま社長だっただけだもん」
「不倫の言い訳みたい」
マコは大口開けて、辛辣。慰めてくれる集まりかと思ったら、別れることを前提にしているし、私の気持ちを全然分かってくれない。
マコがたらふく食べるから料理はどんどん注文するし、私はワインボトルを抱えて飲む始末。まるでやけ酒みたい。
「沙耶、飲みすぎるとしでかすわよ」
弥生はにやけて言う。そう、社長と付き合うきっかけとなったあの夜。記憶を無くしてしまうほど、飲んでしまったあの夜。
なのに、今はちゃんと記憶もあっていい気分で酔っている。この違いはなんなの?
「わたし……五代沼にはまってるの……」
「沼にはまったら抜け出せないからね」
それも底なし沼。もがいても、もがいても這い上がれなくてどうしようもない底なし沼。そんな自分が大嫌い。
「飲むわよ~!!」
「酔っ払い」
こうなったら社長の記憶を無くすくらい飲んでやる。ボトルを抱えて手酌で飲む。送らないからねと二人に言われてもへっちゃら。秘書はタクシーで帰るから。
カラオケでも行きたい気分で二人を誘うとしたとき、一本の電話が入った。
「沙耶」
「ん?」
「沙耶のバッグから電話が鳴ってる音がする」
「私はねぇ~仕事ばっかりで友達があんたたちだけだから、電話なんて鳴らないの~」
「ろれつが回ってないけど、早く出なよ。鳴ってるから」
ワインボトルを抱えてバッグの中を探ると、鳴っていたのは仕事用のスマホだった。
「うそ! 社長からだ! どうしよう」
着信画面には社長と出ている。業務であっても滅多に電話をしない社長が、なんで仕事用の電話を鳴らしたのだろう。
「なんでわざわざこっちを鳴らすのよ」
「自分の方を見てみたら?」
そう言われてプライベートのスマホを見ると、確かに着信履歴があった。
「ふふふ……ねえ、見て……これ……ふふふ」
着信画面を見て私は薄気味悪い笑いを見せる。
「なに? ぷっ……あはははは」
弥生とマコはその画面を見て大笑いした。「やり逃げ野郎」と社長の名前を変えていたからだ。私はなんだか大満足。
「いや、笑ってる場合じゃない。折り返ししなくていいの?」
「しなくていいの~!!」
折り返しなんてしてやるもんか。
「飲むわよ」
「絶対に送らないから」
「いいもんね~」
宴は楽しい。人の悪口がおいしいつまみ。社長だけじゃなくて、マコや弥生の元カレの悪口も言いたい放題。
ワインもボトルを3本目を空け、お代わりを注文しようとボトルを持って振り上げたとき、強い力で腕をつかまれた。
「もう! 誰よ!!」
「俺だ」
「……!!」
そこには今にも青筋が入りそうなほど、怖い顔をした社長が立っていた。
「もうさぁ、誰でもいいとは言わないけど、分相応の男にしなよ」
さすが弥生、的を得ている。
「好きになった人がたまたま社長だっただけだもん」
「不倫の言い訳みたい」
マコは大口開けて、辛辣。慰めてくれる集まりかと思ったら、別れることを前提にしているし、私の気持ちを全然分かってくれない。
マコがたらふく食べるから料理はどんどん注文するし、私はワインボトルを抱えて飲む始末。まるでやけ酒みたい。
「沙耶、飲みすぎるとしでかすわよ」
弥生はにやけて言う。そう、社長と付き合うきっかけとなったあの夜。記憶を無くしてしまうほど、飲んでしまったあの夜。
なのに、今はちゃんと記憶もあっていい気分で酔っている。この違いはなんなの?
「わたし……五代沼にはまってるの……」
「沼にはまったら抜け出せないからね」
それも底なし沼。もがいても、もがいても這い上がれなくてどうしようもない底なし沼。そんな自分が大嫌い。
「飲むわよ~!!」
「酔っ払い」
こうなったら社長の記憶を無くすくらい飲んでやる。ボトルを抱えて手酌で飲む。送らないからねと二人に言われてもへっちゃら。秘書はタクシーで帰るから。
カラオケでも行きたい気分で二人を誘うとしたとき、一本の電話が入った。
「沙耶」
「ん?」
「沙耶のバッグから電話が鳴ってる音がする」
「私はねぇ~仕事ばっかりで友達があんたたちだけだから、電話なんて鳴らないの~」
「ろれつが回ってないけど、早く出なよ。鳴ってるから」
ワインボトルを抱えてバッグの中を探ると、鳴っていたのは仕事用のスマホだった。
「うそ! 社長からだ! どうしよう」
着信画面には社長と出ている。業務であっても滅多に電話をしない社長が、なんで仕事用の電話を鳴らしたのだろう。
「なんでわざわざこっちを鳴らすのよ」
「自分の方を見てみたら?」
そう言われてプライベートのスマホを見ると、確かに着信履歴があった。
「ふふふ……ねえ、見て……これ……ふふふ」
着信画面を見て私は薄気味悪い笑いを見せる。
「なに? ぷっ……あはははは」
弥生とマコはその画面を見て大笑いした。「やり逃げ野郎」と社長の名前を変えていたからだ。私はなんだか大満足。
「いや、笑ってる場合じゃない。折り返ししなくていいの?」
「しなくていいの~!!」
折り返しなんてしてやるもんか。
「飲むわよ」
「絶対に送らないから」
「いいもんね~」
宴は楽しい。人の悪口がおいしいつまみ。社長だけじゃなくて、マコや弥生の元カレの悪口も言いたい放題。
ワインもボトルを3本目を空け、お代わりを注文しようとボトルを持って振り上げたとき、強い力で腕をつかまれた。
「もう! 誰よ!!」
「俺だ」
「……!!」
そこには今にも青筋が入りそうなほど、怖い顔をした社長が立っていた。