5時からヒロイン
仮病の一件があってから、俺は少しだけ砕けて話が出来るようになっていた。しかし、激務は相変わらずで、彼女の身体は心配だった。
休ませてあげたいが、休めと言えばいいのかそれとも、俺が休むから一緒にとでもいえばいいのか。
「無理だな、予定が詰まってる」
年度末に向けて予定はびっしりだ。それも苦手なものばかり。
苦手なのはパーティーだけじゃなく、毎年開かれる園遊会も。
親睦会だから社員の意外な一面を見られて良かったけど、賞品を考えるのが本当に苦痛だった。
彼女に相談出来れば良かったが、情けないと思われるのが嫌で、自分で選んできた。
ネットやSNSを使って今時の流行りを調べる日々。
彼女にあげたいものはいくらでも思い浮かぶのに、賞品は思いつかない。
「う~ん」
と悩んでいると、ノックして彼女が入って来た。
「失礼いたします」
「どうした?」
「園遊会が開催されますが、今年の社長賞は何になさいますか?」
「いつまでに決めればいい」
「まだ先ですが、早い方が宜しいかと思います。出来れば来週中には決めて頂ければ、助かります」
「そうか……君は何が欲しい?」
当たり前だが、欲しいものを聞いたことがなかったから、ここぞとばかりに聞いてしまおう。
「え……?」
唐突に聞いたから答えられないのだろう。彼女は戸惑っていた。
「君は何が欲しい?」
「突然言われましても……」
そうだろうな。
バッグでも靴でもなんでもいいんだ。欲しい物を言ってほしい。
だけど、彼女を困らせるのが嫌いだから、考えておくようにと言い渡して終わりにする。
困らせたくもないのだが、無理もさせたくない。
会議に行くときも、いつも準備万端だった彼女だが、忘れ物や時間が遅れてしまうこともあった。
顔色も悪い。
何度か食事の差し入れをしたけど、そんなんじゃだめだ。
「やっぱり休養かな」
いつもいる者がいなくなるのは寂しい。
それが好きな女なら尚更に決まっている。これまで彼女が休みを取っていなかったことをいいことに、ずいぶん甘えてしまっていたようだ。
頼っていたのは、完全に俺の方だった。
そんなことを考えていると、出勤したとき、休みたいと申し出があった。
「……休むのか?」
休ませたいと考えていたばかりなのに、いざ言われてみると、ショックなのはどういうことだ?
休みの申し出は一週間。
「長いだろ!!」
いや、全く長くはない。いや、長い。
「休むなよ」
いい人ぶって休んでほしいなんて思ったが、やっぱり傍にいてほしい。
そのためには、解決しなくちゃいけないことがある。
それを解決すれば、職場たけじゃなく、自宅でも一緒にいられるというのに、何をしているんだ。
「男の俺がどうにかしなくちゃいけないんだよな」
分かってるのに、どうしてできない五代真弥。
休みはまだ決めかねているが、栄養は取らせるチャンスが来た。
父親の代から懇意にしている、サクラ物産会長夫妻との会食だ。
「何か食べさせよう」
あそこの料理なら間違いない。
料亭に向かう時間が近づき、支度を整えソファで寛いでいた。
「お待たせいたしました。お車の用意ができております」
「分かった」
すっと立ち上がると、彼女が言った。
「奥様は赤がお好きでございます。ネクタイを交換なさってください」
さすがの気遣いだな。
「わかった」
そこで言葉を付け加えて、褒めろ。
で、言わないんだよな俺。
休ませてあげたいが、休めと言えばいいのかそれとも、俺が休むから一緒にとでもいえばいいのか。
「無理だな、予定が詰まってる」
年度末に向けて予定はびっしりだ。それも苦手なものばかり。
苦手なのはパーティーだけじゃなく、毎年開かれる園遊会も。
親睦会だから社員の意外な一面を見られて良かったけど、賞品を考えるのが本当に苦痛だった。
彼女に相談出来れば良かったが、情けないと思われるのが嫌で、自分で選んできた。
ネットやSNSを使って今時の流行りを調べる日々。
彼女にあげたいものはいくらでも思い浮かぶのに、賞品は思いつかない。
「う~ん」
と悩んでいると、ノックして彼女が入って来た。
「失礼いたします」
「どうした?」
「園遊会が開催されますが、今年の社長賞は何になさいますか?」
「いつまでに決めればいい」
「まだ先ですが、早い方が宜しいかと思います。出来れば来週中には決めて頂ければ、助かります」
「そうか……君は何が欲しい?」
当たり前だが、欲しいものを聞いたことがなかったから、ここぞとばかりに聞いてしまおう。
「え……?」
唐突に聞いたから答えられないのだろう。彼女は戸惑っていた。
「君は何が欲しい?」
「突然言われましても……」
そうだろうな。
バッグでも靴でもなんでもいいんだ。欲しい物を言ってほしい。
だけど、彼女を困らせるのが嫌いだから、考えておくようにと言い渡して終わりにする。
困らせたくもないのだが、無理もさせたくない。
会議に行くときも、いつも準備万端だった彼女だが、忘れ物や時間が遅れてしまうこともあった。
顔色も悪い。
何度か食事の差し入れをしたけど、そんなんじゃだめだ。
「やっぱり休養かな」
いつもいる者がいなくなるのは寂しい。
それが好きな女なら尚更に決まっている。これまで彼女が休みを取っていなかったことをいいことに、ずいぶん甘えてしまっていたようだ。
頼っていたのは、完全に俺の方だった。
そんなことを考えていると、出勤したとき、休みたいと申し出があった。
「……休むのか?」
休ませたいと考えていたばかりなのに、いざ言われてみると、ショックなのはどういうことだ?
休みの申し出は一週間。
「長いだろ!!」
いや、全く長くはない。いや、長い。
「休むなよ」
いい人ぶって休んでほしいなんて思ったが、やっぱり傍にいてほしい。
そのためには、解決しなくちゃいけないことがある。
それを解決すれば、職場たけじゃなく、自宅でも一緒にいられるというのに、何をしているんだ。
「男の俺がどうにかしなくちゃいけないんだよな」
分かってるのに、どうしてできない五代真弥。
休みはまだ決めかねているが、栄養は取らせるチャンスが来た。
父親の代から懇意にしている、サクラ物産会長夫妻との会食だ。
「何か食べさせよう」
あそこの料理なら間違いない。
料亭に向かう時間が近づき、支度を整えソファで寛いでいた。
「お待たせいたしました。お車の用意ができております」
「分かった」
すっと立ち上がると、彼女が言った。
「奥様は赤がお好きでございます。ネクタイを交換なさってください」
さすがの気遣いだな。
「わかった」
そこで言葉を付け加えて、褒めろ。
で、言わないんだよな俺。