5時からヒロイン
「あー痛い」
「どこが?」
「胃」
「なんで飲みに誘ったのよ」
どうしても飲みたくて弥生を誘った。食事は済ませて、バーで待ち合わせ。彼女も珍しく残業だったようだ。酒は弱い私だけど、飲み会は好き。
最近一人が寂しくて、誰かといたいのだ。
一応、胃を気にかけて私はカルーアミルク。弥生はバーテンダーおススメをオーダーした。
「あれからどう?」
「ぜんぜん、何も言ってこない」
「ずるい男ね。さっさと諦めなさい」
私に何も言わないのに、社長は甘めな心配をして、私にどうしろというのだろうか。
「思い切って聞いちゃえばいいのに」
「それが出来てるなら、とっくに聞いてるの」
「まったく世話がかかるんだから」
「ねえ、合コンは?」
好きな社長は高根の花。少し想いを残して違う男を好きになったっていい。
大好きな人とは、結ばれない方がいいというではないか。
「次は公務員って言うのはどう?」
「お堅くいくのね」
「最近、安定もいいかなって思うようになってね」
「なるほど」
確かに安定は一番の安心材料。確かにいい。
でもそれって、年を取った証拠じゃない?
「君たち、二人?」
私の隣を一つ空けた隣に座っていた男が声を掛けてきた。久しぶりのナンパだ。
弥生と顔を見合わせ、頷く。
これは、誘いに乗ってしまおうというお互いの意思確認。
男は、発色の良い生地で仕立てられたイタリアンスーツ。身体のラインに沿っているのですぐに分かる。襟の広いシャツまで着て、そうとう自分が好きだと見た。
社長は何でも着こなすけれど、最近はブリティッシュスタイルのスーツを好んで着用している。身体のラインを強調したようなシルエットが、威厳たっぷりで、とても素敵。
「そちらも二人?」
弥生が聞き返す。
「こっちも二人なんだ、良かったら席を移動して一緒に飲みませんか?」
「いいですよ」
カウンターからテーブル席に移動をして、乾杯をする。
「比べるのはよしなさいよ」
「は~い」
弥生は私を良く分かってる。
比べてはしまうだろうけれど、それはそれ。
胃の痛みがないのは、やっぱりホルモンを刺激する男がいるからよ。
「お二人ともめっちゃキレイですね」
「「ありがとう」」
極上の笑顔で返して、謙遜はしない。だってナンパだもん。
「職業は?」
イタリアンスーツを着ている伊達男気どりに聞く。
「外資」
やっぱり。
「そちらは?」
こちらは、細身のスーツを着ているけど、国産吊り下げのスーツ。でも、そこそこ値段は良いと見た。体に合っているところから見て、ちゃんとサイズ直しをしたようだ。
「俺は、飲料メーカー」
なるほど。
「じゃあ、飲んでいても自社製品が気になるでしょう?」
「そうだね」
「君たちは?」
イタリア男が聞く。
「私は、総合職で彼女は秘書」
弥生が私の分も言ってくれた。
「秘書……いいねえ」
そうよ、秘書は、なんだか厭らしい響きと気高い感じ、美しさと教養が合わさったような呼び名。実にいいわ。
「この子は、社長秘書」
弥生は売り込んでくれる。手に届かないかもと思わせるくらいがいいの。まあ、二人とも仕事ぶりは分からないけど、顔はまあまあで遊ぶにはいい感じ。
なんて、遊びなんか出来ない性格のくせして、大口をたたく。でも今夜の私は出来そう。それくらい男日照りなのだ。
弥生も盛り上げてくれ、男子二人ものりがいい。
もしかしたら、合コンよりもナンパの方がいい男を捕まえられる、確率が高いかもしれない。
仕事に追われて毎日、直帰。
寄り道をしない生活じゃあ、ナンパもされない。生活を変えなくては。
「どこが?」
「胃」
「なんで飲みに誘ったのよ」
どうしても飲みたくて弥生を誘った。食事は済ませて、バーで待ち合わせ。彼女も珍しく残業だったようだ。酒は弱い私だけど、飲み会は好き。
最近一人が寂しくて、誰かといたいのだ。
一応、胃を気にかけて私はカルーアミルク。弥生はバーテンダーおススメをオーダーした。
「あれからどう?」
「ぜんぜん、何も言ってこない」
「ずるい男ね。さっさと諦めなさい」
私に何も言わないのに、社長は甘めな心配をして、私にどうしろというのだろうか。
「思い切って聞いちゃえばいいのに」
「それが出来てるなら、とっくに聞いてるの」
「まったく世話がかかるんだから」
「ねえ、合コンは?」
好きな社長は高根の花。少し想いを残して違う男を好きになったっていい。
大好きな人とは、結ばれない方がいいというではないか。
「次は公務員って言うのはどう?」
「お堅くいくのね」
「最近、安定もいいかなって思うようになってね」
「なるほど」
確かに安定は一番の安心材料。確かにいい。
でもそれって、年を取った証拠じゃない?
「君たち、二人?」
私の隣を一つ空けた隣に座っていた男が声を掛けてきた。久しぶりのナンパだ。
弥生と顔を見合わせ、頷く。
これは、誘いに乗ってしまおうというお互いの意思確認。
男は、発色の良い生地で仕立てられたイタリアンスーツ。身体のラインに沿っているのですぐに分かる。襟の広いシャツまで着て、そうとう自分が好きだと見た。
社長は何でも着こなすけれど、最近はブリティッシュスタイルのスーツを好んで着用している。身体のラインを強調したようなシルエットが、威厳たっぷりで、とても素敵。
「そちらも二人?」
弥生が聞き返す。
「こっちも二人なんだ、良かったら席を移動して一緒に飲みませんか?」
「いいですよ」
カウンターからテーブル席に移動をして、乾杯をする。
「比べるのはよしなさいよ」
「は~い」
弥生は私を良く分かってる。
比べてはしまうだろうけれど、それはそれ。
胃の痛みがないのは、やっぱりホルモンを刺激する男がいるからよ。
「お二人ともめっちゃキレイですね」
「「ありがとう」」
極上の笑顔で返して、謙遜はしない。だってナンパだもん。
「職業は?」
イタリアンスーツを着ている伊達男気どりに聞く。
「外資」
やっぱり。
「そちらは?」
こちらは、細身のスーツを着ているけど、国産吊り下げのスーツ。でも、そこそこ値段は良いと見た。体に合っているところから見て、ちゃんとサイズ直しをしたようだ。
「俺は、飲料メーカー」
なるほど。
「じゃあ、飲んでいても自社製品が気になるでしょう?」
「そうだね」
「君たちは?」
イタリア男が聞く。
「私は、総合職で彼女は秘書」
弥生が私の分も言ってくれた。
「秘書……いいねえ」
そうよ、秘書は、なんだか厭らしい響きと気高い感じ、美しさと教養が合わさったような呼び名。実にいいわ。
「この子は、社長秘書」
弥生は売り込んでくれる。手に届かないかもと思わせるくらいがいいの。まあ、二人とも仕事ぶりは分からないけど、顔はまあまあで遊ぶにはいい感じ。
なんて、遊びなんか出来ない性格のくせして、大口をたたく。でも今夜の私は出来そう。それくらい男日照りなのだ。
弥生も盛り上げてくれ、男子二人ものりがいい。
もしかしたら、合コンよりもナンパの方がいい男を捕まえられる、確率が高いかもしれない。
仕事に追われて毎日、直帰。
寄り道をしない生活じゃあ、ナンパもされない。生活を変えなくては。