5時からヒロイン
入院中には、秘書課の皆からお見舞いも送られた。職場の仲間とは言っても、素顔を見せるのは勇気がいるし、病気で入院していると、やっぱり顔色も悪い。具合の悪い姿を見せたくないという気持ちは、同じ女である秘書課の女子は十分分かっているのだろう。
「すっごく可愛い」
見舞いの品として、イチゴ柄のパジャマを頂いた。フリルとリボンまでついていて、とても可愛くて、着るのが勿体ないほど。
「この字は神原さんね」
メッセージカードは手書きで添えられていて、その丁寧で読みやすい字は、すぐに神原さんだと分かった。秘書課で代表して書いたのだろうけれど、とっても温かなメッセージでほろりとしてしまった。
「本当に心配を掛けちゃったわ」
体調管理も仕事の内だと、偉そうに指導していたことが恥ずかしい。一週間の入院となってしまったけど、その後だって自宅療養をしなくてはいけないのだ。
そして今日は待ちに待った退院の日。朝から社長が来て、退院の手続きをしてくれた。
「沙耶、準備が出来たら帰ろうか」
「はい」
ナースステーションで見送りをされ、私は看護師さん達を前に、勝者のような気分で社長と手を繋ぐ。嫌味な女だと分かっていたけど、この一瞬だけでも恋人同士だと、見せびらかしたいという乙女心を分かってほしい。
病院を一歩出た時から、私は秘書にならなければいけない、社長とシークレットな付き合いの始まりだ。だからこの瞬間だけは、堂々としていたい。
「気分はどうだ?」
「痛くもないし、大丈夫。やっと外に出られるわ」
病院の玄関を出ると、外の空気を思い切り吸う。こんなに外が気持ちいいと感じるなんて久し振り。たった一週間の入院だったけど、秋の深まるのは早くて、ひんやりとした空気が清々しかった。
病院の庭には、赤く色づき始めた葉が所々に見られ、ひらひらと落ちる葉を見て、センチメンタルな気分になった。
私は社長と繋いでいた手を離した。
「どうした?」
「どうかしました?」
とぼけてみたが、なんだか胸が痛いし、張り裂けそうだ。秘密の恋なんて、ミステリアスでいいけど、幸せな恋には程遠くていいものじゃない。
社長は私の考えていることはお見通しのようで、離した手をまた繋いだ。
「何も心配しなくていい」
その一言は、私をどれだけ安心させてくれたことか。涙が出そうになった。
「すっごく可愛い」
見舞いの品として、イチゴ柄のパジャマを頂いた。フリルとリボンまでついていて、とても可愛くて、着るのが勿体ないほど。
「この字は神原さんね」
メッセージカードは手書きで添えられていて、その丁寧で読みやすい字は、すぐに神原さんだと分かった。秘書課で代表して書いたのだろうけれど、とっても温かなメッセージでほろりとしてしまった。
「本当に心配を掛けちゃったわ」
体調管理も仕事の内だと、偉そうに指導していたことが恥ずかしい。一週間の入院となってしまったけど、その後だって自宅療養をしなくてはいけないのだ。
そして今日は待ちに待った退院の日。朝から社長が来て、退院の手続きをしてくれた。
「沙耶、準備が出来たら帰ろうか」
「はい」
ナースステーションで見送りをされ、私は看護師さん達を前に、勝者のような気分で社長と手を繋ぐ。嫌味な女だと分かっていたけど、この一瞬だけでも恋人同士だと、見せびらかしたいという乙女心を分かってほしい。
病院を一歩出た時から、私は秘書にならなければいけない、社長とシークレットな付き合いの始まりだ。だからこの瞬間だけは、堂々としていたい。
「気分はどうだ?」
「痛くもないし、大丈夫。やっと外に出られるわ」
病院の玄関を出ると、外の空気を思い切り吸う。こんなに外が気持ちいいと感じるなんて久し振り。たった一週間の入院だったけど、秋の深まるのは早くて、ひんやりとした空気が清々しかった。
病院の庭には、赤く色づき始めた葉が所々に見られ、ひらひらと落ちる葉を見て、センチメンタルな気分になった。
私は社長と繋いでいた手を離した。
「どうした?」
「どうかしました?」
とぼけてみたが、なんだか胸が痛いし、張り裂けそうだ。秘密の恋なんて、ミステリアスでいいけど、幸せな恋には程遠くていいものじゃない。
社長は私の考えていることはお見通しのようで、離した手をまた繋いだ。
「何も心配しなくていい」
その一言は、私をどれだけ安心させてくれたことか。涙が出そうになった。