5時からヒロイン
そんなことを感じながら私は、驚愕な時間を社長と過ごして、社長の自宅マンションへと帰って来た。
「疲れてないか?」
「社長……どうしよう」
「何が」
「だって、これ……」
初めて経験する、セレブ体験。
「これで心配することなく此処にいられるだろ?」
リビングには、デパートで買ってきた品物が置かれていた。その量は半端じゃなく、私の一週間分の生活用品だった。いや、もっといける。
「帰すつもりはない」と社長が突然言い出して、ルームウエア、ランジェリー、パジャマ、化粧品、靴、バッグ、スーツ、ブラウスと私を包む物、必要な物全てを買い物して帰って来た。
買うたびにいらないと言ったけれど、店員のいる前で社長に恥をかかせるわけにも行かず、私は腹を括って買い物を楽しんだ。途方もない購入金額に、めまいがしそうだった。
ここに来て申し訳なさに落ち込んでいると、社長が言った。
「ずっと君にしてやりたかったことの一部だ。毎年、誕生日が来るたびに、何か買ってやりたかったが、一社員に社長が何か贈ることなど出来ないだろう? 頑張って俺を支えてくれている沙耶に、何かしたいと思うのは普通だと思うが?」
「社長」
「有休の一週間。俺に沙耶の時間をくれないか? いいだろう?」
「本当にそれでいいんですか? 私の有休なんて」
「どんなものより価値があるよ。沙耶の時間が全て俺の物なんて」
社長の口癖が、時間を無駄にしないと言うことで、こうしていても一秒前には戻れないんだから、前に進む方がいい。
「本当にありがとう、とっても嬉しい」
私は、素直にお礼を言った。
「私のルブタン」
「そればっかりだな」
絵に描くような山積みされた買い物の中に、ひときわ輝くルブタンの箱。私はここよと呼んでいるかのようだ。
「あ~ん、かわいい」
靴を履いてルンルンな私を、ソファに座って親のように見る社長は、ものすごく満足そうな顔をしている。やっぱり素直に買ってもらって良かった。
でもこれからは、そんなことして貰うつもりはない。恋人であって愛人じゃないもの。
「よく似合ってる」
足を組んでソファに座って、頬杖をついている社長が、満足そうに笑って言った。
第一印象は良くなかった社長のマンションだったけど、改めて見ると本当に素敵だ。明るいグレーとベージュの二色で色を抑えられていて、男の人の一人暮らしらしく、余計な飾り物はない。間接照明があるけれど、私でも高価だと知っているメーカーだ。私の家のように天井に一つある照明とは全く違うおしゃれさだ。
観葉植物まであって、おしゃれ過ぎて憎たらしい。サボテンまで枯らしてしまう私とはえらい違い。
同じように仕事が忙しいはずなのに、社長はホテルのように整えられた部屋で、私はゴミの山に暮らしている。少し残念な所があって人間なのに、パーフェクトとはどういうことだろう。
社長も私も、スーツからルームウエアに着替え、ソファに並んで座る。私は社長に寄りかかり、肩を引き寄せられる。話の合間に視線がぶつかれば、交わされるキス。
なんて幸せなんだろう。
社長の贈り物を開けては、嬉しそうにする私が、社長は満足なようで、「今度は何が欲しい?」と聞く。これだけの物を買ってもらって、欲しいものなど浮かばない。
それに、お金持ちだから好きになったんじゃないけど、これだけの品数をプレゼントされれば嬉しいに決まってる。
でも、付き合いが発覚したら、私が違うと言っても、周りはそう見えてしまうだろう。その時私はどうするだろう。
でも今は難しいことは考えずに、この幸せに浸っていたい。
「いろいろな所に行きたいです」
「そうだな」
私達は公のデートは難しいだろう。変装まですることはないけど、長身の私たちが並んで歩くと、本当に目立つから、街を堂々と歩くのは難しい。
それでもデートはしたいと思うのは当たり前で、なんとか実行したい。こうしてマンションで会ってもいいし、デート場所で待ち合わせて会ってもいい。いろいろな手段を使ってでもデートはしたい。
「疲れてないか?」
「社長……どうしよう」
「何が」
「だって、これ……」
初めて経験する、セレブ体験。
「これで心配することなく此処にいられるだろ?」
リビングには、デパートで買ってきた品物が置かれていた。その量は半端じゃなく、私の一週間分の生活用品だった。いや、もっといける。
「帰すつもりはない」と社長が突然言い出して、ルームウエア、ランジェリー、パジャマ、化粧品、靴、バッグ、スーツ、ブラウスと私を包む物、必要な物全てを買い物して帰って来た。
買うたびにいらないと言ったけれど、店員のいる前で社長に恥をかかせるわけにも行かず、私は腹を括って買い物を楽しんだ。途方もない購入金額に、めまいがしそうだった。
ここに来て申し訳なさに落ち込んでいると、社長が言った。
「ずっと君にしてやりたかったことの一部だ。毎年、誕生日が来るたびに、何か買ってやりたかったが、一社員に社長が何か贈ることなど出来ないだろう? 頑張って俺を支えてくれている沙耶に、何かしたいと思うのは普通だと思うが?」
「社長」
「有休の一週間。俺に沙耶の時間をくれないか? いいだろう?」
「本当にそれでいいんですか? 私の有休なんて」
「どんなものより価値があるよ。沙耶の時間が全て俺の物なんて」
社長の口癖が、時間を無駄にしないと言うことで、こうしていても一秒前には戻れないんだから、前に進む方がいい。
「本当にありがとう、とっても嬉しい」
私は、素直にお礼を言った。
「私のルブタン」
「そればっかりだな」
絵に描くような山積みされた買い物の中に、ひときわ輝くルブタンの箱。私はここよと呼んでいるかのようだ。
「あ~ん、かわいい」
靴を履いてルンルンな私を、ソファに座って親のように見る社長は、ものすごく満足そうな顔をしている。やっぱり素直に買ってもらって良かった。
でもこれからは、そんなことして貰うつもりはない。恋人であって愛人じゃないもの。
「よく似合ってる」
足を組んでソファに座って、頬杖をついている社長が、満足そうに笑って言った。
第一印象は良くなかった社長のマンションだったけど、改めて見ると本当に素敵だ。明るいグレーとベージュの二色で色を抑えられていて、男の人の一人暮らしらしく、余計な飾り物はない。間接照明があるけれど、私でも高価だと知っているメーカーだ。私の家のように天井に一つある照明とは全く違うおしゃれさだ。
観葉植物まであって、おしゃれ過ぎて憎たらしい。サボテンまで枯らしてしまう私とはえらい違い。
同じように仕事が忙しいはずなのに、社長はホテルのように整えられた部屋で、私はゴミの山に暮らしている。少し残念な所があって人間なのに、パーフェクトとはどういうことだろう。
社長も私も、スーツからルームウエアに着替え、ソファに並んで座る。私は社長に寄りかかり、肩を引き寄せられる。話の合間に視線がぶつかれば、交わされるキス。
なんて幸せなんだろう。
社長の贈り物を開けては、嬉しそうにする私が、社長は満足なようで、「今度は何が欲しい?」と聞く。これだけの物を買ってもらって、欲しいものなど浮かばない。
それに、お金持ちだから好きになったんじゃないけど、これだけの品数をプレゼントされれば嬉しいに決まってる。
でも、付き合いが発覚したら、私が違うと言っても、周りはそう見えてしまうだろう。その時私はどうするだろう。
でも今は難しいことは考えずに、この幸せに浸っていたい。
「いろいろな所に行きたいです」
「そうだな」
私達は公のデートは難しいだろう。変装まですることはないけど、長身の私たちが並んで歩くと、本当に目立つから、街を堂々と歩くのは難しい。
それでもデートはしたいと思うのは当たり前で、なんとか実行したい。こうしてマンションで会ってもいいし、デート場所で待ち合わせて会ってもいい。いろいろな手段を使ってでもデートはしたい。