5時からヒロイン
病気療養中はプリンセスのように扱われ、気持ちがふあふあして、地に足がついていなかった。
栄養管理の行届きた食事、社長からの溢れる愛情。私にはどれも欠けてはいけないスパイスで、病気だったのが嘘のようだった。痛みなんか全くなくて、食欲も旺盛。仮病だったのかと思うほどだった。
おはようのキス。
行ってきますのキス。
ただいまのキス。
お休みのキス。
そんな幸せいっぱいの時間は終わり、今日は自分のマンションに帰る日だ。
週明けには出勤の予定で、快気祝いも買わなくちゃいけないし、個別に配るギフトも用意しなくちゃいけない。マンションに帰るまで忙しいのだ。
幸せだったけど、私は不満だった。
「一度も抱かれない」
腕枕をして、抱きしめてくれていたのに、抱いてはくれなかった。抱かないのは私が病人だったからだけど、好きな女を前にして我慢が出来るなんて聖人か社長くらいだろう。女の私が悶々としてしまっていたのに、男の社長が理性を保てるなんて本当にすごい。
まてよ。痩せてしまった私の身体にはそそらないのかもしれない。
確かにお椀型の胸は滑り台になってしまったけど、今は体重も戻りつつあって、50度くらいの傾斜があったおっぱいは傾斜もほとんどなくなっている。まだまだ張りのあったおっぱいじゃないけど、十分こたえられるだけの代物だ。
確かに胸の痩せ具合がショックで、セックスしたくないと思っていたけど、大好きな人と毎日、一緒に寝ていて欲情しないわけがない。
メイクをして鏡の前で胸を掴んでみる。
「いいじゃない、大丈夫じゃない」
それなのに、抱かれなかった。
「沙耶? どうした?」
なかなか戻ってこない私を心配して、社長がパウダールームを覗きに来た。そうそう、社長の自宅にはパウダールームまであった。胸をもみもみしていた私は、慌てて社長に振り向く。
「な、なんでもないです」
「支度は?」
「できました」
社長が手を差し出してくれたので、手を重ねると、引き寄せられてキスをする。なんだか一生会えないみたいで嫌だ。
「送って行こう」
「はい」
私の荷物は出勤に使うトートバッグだけ。買ってもらったものは置いて行きなさいと言われ、素直に従った。
かなりヒールが低くなったルブタンを履いて、くるりと一回り。
「似合う?」
「よく似合ってるよ」
「うふふ、ありがとう」
これから私のパートナーはこのリボンがついたパンプスだ。喜ぶ私を見て社長も満足げ。
「で、何を買うんだ?」
「秘書課みんなで食べられるお菓子と、女子たちにチョコレートでも買おうかと」
「いいんじゃないか?」
マンションを出ると、爆買いした会社贔屓のデパートへ向かう。週末と言うこともあって、地下の食品売り場は混雑していた。デパ地下の惣菜はそうそう手が出せる物じゃない。下手したら外食よりも金額がいってしまうこともある。
葉っぱをマヨネーズで混ぜたサラダに、600円は出せない。
社長とはぐれないように、しっかりと手を繋いで目的の店まで行く。みんな惣菜に目がいって、抜群のいい男と女が歩いているのに、目もくれない。
栄養管理の行届きた食事、社長からの溢れる愛情。私にはどれも欠けてはいけないスパイスで、病気だったのが嘘のようだった。痛みなんか全くなくて、食欲も旺盛。仮病だったのかと思うほどだった。
おはようのキス。
行ってきますのキス。
ただいまのキス。
お休みのキス。
そんな幸せいっぱいの時間は終わり、今日は自分のマンションに帰る日だ。
週明けには出勤の予定で、快気祝いも買わなくちゃいけないし、個別に配るギフトも用意しなくちゃいけない。マンションに帰るまで忙しいのだ。
幸せだったけど、私は不満だった。
「一度も抱かれない」
腕枕をして、抱きしめてくれていたのに、抱いてはくれなかった。抱かないのは私が病人だったからだけど、好きな女を前にして我慢が出来るなんて聖人か社長くらいだろう。女の私が悶々としてしまっていたのに、男の社長が理性を保てるなんて本当にすごい。
まてよ。痩せてしまった私の身体にはそそらないのかもしれない。
確かにお椀型の胸は滑り台になってしまったけど、今は体重も戻りつつあって、50度くらいの傾斜があったおっぱいは傾斜もほとんどなくなっている。まだまだ張りのあったおっぱいじゃないけど、十分こたえられるだけの代物だ。
確かに胸の痩せ具合がショックで、セックスしたくないと思っていたけど、大好きな人と毎日、一緒に寝ていて欲情しないわけがない。
メイクをして鏡の前で胸を掴んでみる。
「いいじゃない、大丈夫じゃない」
それなのに、抱かれなかった。
「沙耶? どうした?」
なかなか戻ってこない私を心配して、社長がパウダールームを覗きに来た。そうそう、社長の自宅にはパウダールームまであった。胸をもみもみしていた私は、慌てて社長に振り向く。
「な、なんでもないです」
「支度は?」
「できました」
社長が手を差し出してくれたので、手を重ねると、引き寄せられてキスをする。なんだか一生会えないみたいで嫌だ。
「送って行こう」
「はい」
私の荷物は出勤に使うトートバッグだけ。買ってもらったものは置いて行きなさいと言われ、素直に従った。
かなりヒールが低くなったルブタンを履いて、くるりと一回り。
「似合う?」
「よく似合ってるよ」
「うふふ、ありがとう」
これから私のパートナーはこのリボンがついたパンプスだ。喜ぶ私を見て社長も満足げ。
「で、何を買うんだ?」
「秘書課みんなで食べられるお菓子と、女子たちにチョコレートでも買おうかと」
「いいんじゃないか?」
マンションを出ると、爆買いした会社贔屓のデパートへ向かう。週末と言うこともあって、地下の食品売り場は混雑していた。デパ地下の惣菜はそうそう手が出せる物じゃない。下手したら外食よりも金額がいってしまうこともある。
葉っぱをマヨネーズで混ぜたサラダに、600円は出せない。
社長とはぐれないように、しっかりと手を繋いで目的の店まで行く。みんな惣菜に目がいって、抜群のいい男と女が歩いているのに、目もくれない。