5時からヒロイン
これから私は秘書にならなければいけないけど、ちゃんと出来るか不安でしょうがない。
いつもしているように、新聞とコーヒーを持って行く。
社長室の扉の前で、深呼吸をしてドアをノックすると、いつもと同じ口調で返事があった。
「失礼します」
恋人になる前の社長と、変わらない雰囲気で座っていた。パソコンから目を離さず、私が整えた新聞を受け取り、コーヒーを飲む。
「美味しい」
「ありがとうございます」
職場復帰の挨拶をした方がいいだろうかと、悩んだけど、そこまですると嫌味になるような気がして、やめた。
「本日の予定でございます」
淡々と予定を読み上げ、黙ってそれを聞く。私と社長の距離は、デスクを挟んでいるだけなのに、ものすごく遠く感じる。
仕事なんだから、これが当たり前なんだと頭では分かっているけど、社長を好きだと言う気持ちは、感情を直ぐに切り替えられるほど、軽いものじゃない。それでも秘書という立場を貫き通すために、毅然とした振る舞いをしなくちゃいけない。
「分かった」
「本日もよろしくお願いいたします」
朝のやり取りは、社長秘書になってから変わることはなく、同じことをずっと繰り返している。だから今だって特別なことは何もないはずなのに、私の心はどこか寂しい。
この社長室だって二人きりで、周りの視線は気にしなくてもいいんだから、せめて視線くらい合わせてくれてもいいじゃない。
けじめをつけるのは当たり前だけど、臨機応変にしたって罰はあたらないはず。
「ふんだ」
お菓子の入った引き出しを整理しながら、行き場のない怒りをお菓子にぶつける。
今日も朝から戦略会議、来年度の人材採用に関する会議、夜は会食まで入っている。
正直、会議があるときは、デスクでモニターを見ながら進行状況を把握して、お茶を出せばいいだけだから楽なのだ。
たまに出席することもあるけど、その時は本当に最悪。閉じそうになる瞼を必死で開けていなくちゃいけないから、会議は本当に嫌い。
お菓子を整理する為に、ストックバッグを持って来ていた。家を掃除したら、なんだか片付け意欲が湧いて、デスクの中を思い出したのだ。
いつもしているように、新聞とコーヒーを持って行く。
社長室の扉の前で、深呼吸をしてドアをノックすると、いつもと同じ口調で返事があった。
「失礼します」
恋人になる前の社長と、変わらない雰囲気で座っていた。パソコンから目を離さず、私が整えた新聞を受け取り、コーヒーを飲む。
「美味しい」
「ありがとうございます」
職場復帰の挨拶をした方がいいだろうかと、悩んだけど、そこまですると嫌味になるような気がして、やめた。
「本日の予定でございます」
淡々と予定を読み上げ、黙ってそれを聞く。私と社長の距離は、デスクを挟んでいるだけなのに、ものすごく遠く感じる。
仕事なんだから、これが当たり前なんだと頭では分かっているけど、社長を好きだと言う気持ちは、感情を直ぐに切り替えられるほど、軽いものじゃない。それでも秘書という立場を貫き通すために、毅然とした振る舞いをしなくちゃいけない。
「分かった」
「本日もよろしくお願いいたします」
朝のやり取りは、社長秘書になってから変わることはなく、同じことをずっと繰り返している。だから今だって特別なことは何もないはずなのに、私の心はどこか寂しい。
この社長室だって二人きりで、周りの視線は気にしなくてもいいんだから、せめて視線くらい合わせてくれてもいいじゃない。
けじめをつけるのは当たり前だけど、臨機応変にしたって罰はあたらないはず。
「ふんだ」
お菓子の入った引き出しを整理しながら、行き場のない怒りをお菓子にぶつける。
今日も朝から戦略会議、来年度の人材採用に関する会議、夜は会食まで入っている。
正直、会議があるときは、デスクでモニターを見ながら進行状況を把握して、お茶を出せばいいだけだから楽なのだ。
たまに出席することもあるけど、その時は本当に最悪。閉じそうになる瞼を必死で開けていなくちゃいけないから、会議は本当に嫌い。
お菓子を整理する為に、ストックバッグを持って来ていた。家を掃除したら、なんだか片付け意欲が湧いて、デスクの中を思い出したのだ。