5時からヒロイン
後ろ向きの考えていても恋愛はつまらないけど、夜はどうしても寂しくなって良からぬ方に考えがいってしまう。
「でも……」
寂しさに負け弥生に電話をすると、
『恋愛してるときに寂しくなったら、彼氏に電話をするもんだけど?』
「そうだけど、会社でも会って、帰りも送ってもらって、電話までしたらしつこくない? うざい女になりたくないんだもん」
『気を使う恋愛ならやめなさい』
美容に悪いから早く寝なさいと、姉のように言われて電話を切られた。
最低限の気を使っていただけなのに、気を使いすぎていたのだろうか。でもそれは、優しさなんじゃないだろうか。
大人の恋はどうして素直になれないんだろう。いろいろと知りすぎてしまったからだろうか。
自分の思いだけで突き進んでいた、子供のときとは違って、色々な物が私をがんじがらめにして自由がきかない。
好きだと言ったらどうなるんだろうと、思っていた時が一番楽しかったかもしれない。
気持ちが良い方向と悪い方向に行ったり来たりして、情緒不安定なのか。
「睡眠不足だからそんなことを考えるのね。今夜は、これを抱いて我慢しよう」
スタンドの電気を消して、久し振りに社長の代わりに抱いていた抱き枕を抱く。全然抱き心地は違うけど、人恋しさは少し軽くなった。
抱き枕を抱いて社長を思い出すと、優しい顔が浮かんだ。
単純かもしれないけど、今夜はこれで十分だ。