Moonlight memory【短篇】
moonlight memory
月は嫌いだ
蒼天を支配する存在感で
佇む月は
その存在感ゆえに
孤独に見える
そしてその孤独が
あの空で失ったものを
思い出させるから
空に消えた
あの人を
思い出させるから……
「ドルチェさん、お待たせしました。出来ましたよ」
ドアが開け放しになった小屋の入り口をくぐり声をかけると
「おお、治ったか。遅くまですまんなヴィンス」
髭面の大柄な男が積み木片手に振り返る。いかめしいその風貌とおよそ似合わぬ積み木との組み合わせに思わず吹き出しそうになるのをこらえた。