Moonlight memory【短篇】
宇宙から地上へ戻って六年になる。
焦がれて向かった宇宙で大切なモノを失った時、そこはもう俺にとってはなんの希望も夢も見出せない場所になってしまった。
だから、宇宙を捨て地上へと降りた。
「パパ、みてみて。おつきさまがついてくるよ」
助手席ではしゃぐ娘のあどけない声。
「そうかい?」
俺は視線を動かすことなく一心に前だけを見つめ、ハンドルを操りながらそれに答えた。
愛娘の目に映るものを一緒に愛でたい気持ちはあるものの、それだけは見ることが出来ない。
月を見れば嫌でも思い出してしまう……
押さえ込んだ胸の痛みを引き摺り出すあの光景を、鮮烈に焼きついた光景を。
今、ここで起きたかことのように生々しく脳裏に再現させてしまいそうで……
だから俺は、地上に降りて以来なるだけ夜空を見上げないようにしてきた。
特に。
月が明るく輝く晩は――