蒼月の約束
しかし、とうとうエルミアの足が止まった。
どれくらいの時間、自分が昇り続けて来たのか、どれくらいの距離来たのは分からないが、呼吸は苦しく、全身が痛い。
その上、お腹まで空いてきた。
「もう…無理」
エルミアは、湿った苔の階段に座り込んだ。
酷使した体が悲鳴を上げているのが、自分ではどうしようもない程痙攣している足を見ればわかる。
「頂上はどこよ…」
上を見上げると、鳥居はさらに続いているのが目に入った。
まだまだ先は長そうだ。
一生上り続けるのかと思うと、急にぞっとした。
さっきまで忘れていた恐怖感がまた襲ってきた。
しかし、下を見るとすでに地上は、濃い霧で覆われているせいか見えなくなっていた。
「ど、どうしよう…。ここに一人残されたら…」
不安が口をついて出てくる。
「まさか、私も彷徨える魂の一人になるの…?そんなの嫌…」
そんな恐怖で支配されていたエルミアは、突然「ねえ」と声をかけられて、力の限り叫んだ。
「ぎゃあああ!やだ!幽霊!?ゴースト!?私を連れて行かないで~!」
とにかくどこかにさらわれないように、自分をしっかり抱え込んで膝に顔を埋める。
「落ち着いて!」
声は焦ったように言った。
「生きてるから、ほら!」
声の主は、そう言ってエルミアの腕を掴んで、無理やり立たせた。