蒼月の約束
帰りの道は、行きより容易だと思うことなかれ。
「下りの階段、キツかった…」
気の遠くなるような長い階段を最後まで降りきったころには、またもや足はガクガクで、何度か足を滑らせたせいか、体のあちこちから血が出ている。
はあはあと、肩で荒い息をしながら先ほど通った道を戻って行く。
早く王宮に帰って、ふかふかのベッドに体を沈めて、深い眠りにつきたい。
そう自分を奮い立たせながら、やっとのことでエルフたちと別れたところまでやって来た。
森の外はいつの間にか日が昇り、夜が明けたと気づいた時には、エルミアは王子の腕の中にいた。
「よかった、無事で」
一睡もせずに帰りを待っていたのであろう、エルフ五人は皆、疲れた顔をしていた。
「うん、大丈夫…」
そう言った瞬間に、また全身が震え始めた。
抱きしめられた時の王子の優しいぬくもりと、安心感に、今まで保っていた緊張の糸が切れた。
体力の限界がここで来た。
「ミア!」
王子が遠くの方で叫ぶのが聞こえたが、エルミアはそのまま意識を手放した。