蒼月の約束
第二話
久しぶりの実家は、思った以上に羽が伸ばせそうだ。
食事の準備は手伝うものの、早起きをしたり料理をしたりする必要がない。
目覚ましもかけずに眠ったが、いつも早い時間に起きるため、結局いつものように目を覚ましてしまった。
しばらく布団の中で、ゴロゴロしているとお母さんの「朝ごはんよ~」という声が聞こえた。
朝ごはんが出来たと起こされるなんて、いつぶりだろうと、パジャマのままリビングへと向かう。
食卓の上は、まだ用意されていなかった。
「あ、朱音おはよう。用意お願い」
お母さんが目玉焼きを作りながら言った。
みんながすぐに集まらないのを見越して、早めに声をかけたのだろう。
結局、朱音は食卓の準備をするはめになり、いつもタイミングがいい妹亜里沙は、全員がそろい、全てのセッティングが終わったあとに姿を現した。
「その能力欲しいわ…」
ぼそっと呟いた朱音の言葉は、まだ半分も覚醒していない亜里沙の耳に届くことはなかった。
相変わらず黒いパジャマを着ているおばあちゃんは、静かに味噌汁をすすっているかと思えた。
しかし、その眼は何か言いたげにずっと朱音を見ている。
「どうかした?」
その視線に耐えきれなくて、朱音は魚をほぐしながら聞いた。
その質問を投げかけるまで、ずっと視線を送って来るだろうことが分かったので、しぶしぶだ。
朱音が自らおばあちゃんに声をかけたのを聞いた亜里沙が、ここでやっと覚醒した。
「朱音、お前は…水難の相が出ているよ」
何となくおばあちゃんの口から出る言葉は覚悟していた。
どうせ、何の根拠もないあてずっぽうだろう。
「気をつけなはれや」
しかし、朱音は一瞬だが恐怖めいたものを感じてしまった。
「もう、やめようよ。おばあちゃん」
呆れを通りこして、怒りを覚えながら亜里沙が言った。
「こう見えてお姉ちゃんはビビりなんだから」
「ビビり言うな」
「怖がって、亜里沙と遊んでくれなくなったら、おばあちゃんのせいだよ」
「なんで、あんたと遊ぶこと前提なの」
お母さんとお父さんも同じように、全く気にしていないようだ。
朱音と亜里沙が仲良さそうに話しているの、微笑ましそうに見ている。