蒼月の約束
第十七話
ふん!
こんな淡い恋心なんぞ、その辺の犬にでもくれてやる!
犬なんて一匹も見ないけどね!
そう自分の気持ちを奮い立たせるには、数日かかったが、意外と早くエルミアは立ち直っていた。
恋愛経験が少ないだけあって、失恋することもこの短い人生において、一つのいい学習だと前向きな結論に至ったのだ。
「エルミア、完全復活~!」
湯船の中で、エルミアは叫んだ。
「リーシャ!」
お風呂の中から、外で待機しているリーシャに声をかける。
「はい、なんでしょうか?」
扉越しにリーシャが困惑した声色で聞いた。
良く分からない叫び声を聞いていたのは一目瞭然だ。
「調べて欲しいことがあるの。プラネット・オーシャン周辺に、フキ畑があるかかどうか」
先日、ふきの話を聞いて以来何も行動を起こしていないことに気づいたエルミアは、精霊問題にきちんと専念することを決意した。
私が、ここに残る理由はそれだから。それ以外の何物でもない。
そう自分に言い聞かせる。
「ふき…ですか」
またもや不思議そうな声を出すリーシャに、エルミアはお風呂の淵に腕を乗せながら言った。
「そう。この前、湖に行った時にまた予言を聞いたの。ふきの住人を探せって言ってた」
「分かりました。調べてみます」
リーシャはそう言い、足音が遠のくのが聞こえた。
「よっしゃ、頑張るぞー!」
エルミアは、そう気合いを入れ、勢いよく水の中に潜った。