蒼月の約束


リーシャに頼み事をしておきながら、自分はいつものお気に入りの噴水の場所で涼んでいるさまを客観視してみると、本当にこの不思議な世界に対して違和感がなくなってきたんだと実感してしまう。


図鑑ですら見たこともないカラフルな鳥たちが空を楽しそうに飛び回り、かつて呪いの森と呼ばれていた森は、今もなお秋の色を見せている。


この先を真っすぐ歩いて行くと、今では友達であり、相談相手のアゥストリがいるドワーフの村がある。


ここに残ると決心してみたものの、この世界がどんなところなのか、全く知らない。


地図を見る限り、複雑そうではないが、まだまだ未知の生き物たちがたくさん存在しているのだろう。


そう思うと、不思議と心がワクワクした。



「ここで、何をしてるの?」

雲が流れる様子を観察していたエルミアは、誰かが近づいているのにも、気がつかなかった。

どこかで見たことある人物が立っている。


赤褐色の肌に、大きなエメラルドグリーンの瞳。
短髪の銀色の髪が太陽に反射してキラキラ輝いている。

前回は、服装に全く目がいかなかったが、動きやすそうな忍者のような身なりをしている。

ここに住んでいるエルフたちとは雰囲気が全く異なる。

背は自分より幾分も高いのに、まだ顔に幼さを残すその人物は、軽い身のこなしで、エルミアに近づいた。


「予言の娘さん」

思い出すのに時間がかかったが、エルミアは「あ!」と大声を出し立ち上がった。

「レ―…!」

その瞬間、前にいたはずの少年が、音もなく背後に回りエルミアの口元を塞いだ。

「静かに。誰かに見つかると面倒だから。ね?」

一瞬で何が起きたか分からないエルミアは、とにかく首を縦に振るしかなかった。


しかし、少年はすぐに手を離してはくれず、辺りを鋭く見渡し、どこからも足音が聞こえないと分かってから、エルミアを解放した。

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