蒼月の約束
「道がきれいに舗装されているね」
数年ぶりに帰って来た田舎は、もっと住民が住みやすいように山道も改善されていた。
昔はうっそうと茂っていた森林も、木の数がだいぶ減り、薄暗くて不気味だった山道は遠くまでもよく見通せるようになっている。
少し前を亜里沙が歩き、それに付いていくように朱音は周りを見渡した。
「少しずつ変わっていくんだね」
ふと亜里沙が立ち止まって、振り返った。
「ねえ、こんな道あったっけ?」
広い砂利道の脇に、人、一人は通れるだろう細いレンガ道が新しく作られていた。
観光客が分かるようにか、きちんとした看板も立っている。
「鏡の泉、だって」
最近造られたであろうキレイな木目の看板を読みながら、亜里沙は言った。
「こっち、行こうよ!」
腕を引っ張られ、半ば強制的に朱音は細い道へと入って行く。
少し歩くとすぐに、水の音が聞こえてきた。
「へぇ、こんなところあったんだ」
朱音は思わず顔がほころぶのが分かった。
林を抜けた先には、まるで空の色をそのまま映したかのような色をした泉があった。
「すごい、きれい!」
亜里沙ははしゃぎ、何の躊躇もなくサンダルのままバシャバシャと水の中へと入って行く。
純度の高い透明感のせいか、浅瀬であることは一瞬で分かった。
朱音は、近くの岩場を見つけ、そこに歩いて行って腰かけた。