蒼月の約束
第十八話
「竜宮城へは、「竜宮の使い」と呼ばれる生き物に乗っていくようです。
彼なら潮の動きを完璧に読むことが出来ます。
なんせ、この先は魔の海域と呼ばれるほど、いったん潮に捕まったら、逃れられませんから」
青年コロボックルは、トックという。
青い民族衣装に身を包んだ、正義感が強く誰にでも優しそうなタイプだ。
トックは一行を、反対側の海岸へと案内しながら話していた。
自分がお役に立てるなら、と喜々として竜宮城への行き方を説明してくれいる。
「竜宮の使い…。絶対、カメだ」
話を聞きながらエルミアは心躍らせていた。
昔読んだ童話が頭の中で蘇る。
助けたカメはいないが、竜宮城へ連れて行く役目を担うのは、カメ以外には考えられない。
「しかし、水中で呼吸は出来ないですが…」
一番の問題を提起したのは、リーシャだった。
竜宮城というメルヘンな世界に浸かっていたエルミアは、そこで現実に引き戻された。
「確かに」
「その問題には及びません」
一生懸命歩きながらトックは胸を張った。
「水中でもしばらくは息が出来る植物を頂きました」
しばらく歩いたのち、一行が着いたのは、先ほどの海岸とは似ても似つかないほど荒れた場所だった。