蒼月の約束
ごつごつとした、荒波に削られた岩々がそびえ立ち、先ほどの穏やかな波が幻想だったかのように、激しい波が打ち付けている。
リゾート地のような白い砂浜は消え、代わりに黒っぽい砂利の浜辺が広がっていた。
「うわぁ…」
これぞ、魔の海域。
と言わんばかりに、大きな波が荒れ狂っているだけでなく、少し先には複数の渦さえも見える。
まるで、嵐真っただ中の海以上の荒れ具合だ。
しかし海とは正反対に、空は眩しいほどに晴天である。
この中に入って行くのは、まさに自殺行為だと思わずにはいられない。
「これって、無謀なんじゃ…」
そう呟くエルミアに、トックはかぶりを振った。
「大丈夫です!人魚の花がありますから」
そう言ってポケットから、オレンジ色の小さな花をいくつか取り出した。
「これを食べれば、水中でも地上と同じように呼吸が出来るようです」
「どれくらい持つの?」
ナターシャが不安そうに聞いた。
水中で呼吸が出来るなんて信じられないという表情を隠そうとはしていない。
「おそらく10時間くらいかと」
そして慌てて付け加えた。
「ただし、それはコロボックルの僕たちが、です。なので…」
エルフを見ると、指を折って計算している。
「エルフの方々は、3・4時間くらいでしょうか。
予言の方は、体が小さいのでもう少し余分だと思います」
「とにかく制限時間は、3時間と考えた方が良さそうですね」
リーシャが呟くように言った。