蒼月の約束

「危険だ」

トックが竜宮の使いを呼ぶために口笛の練習をしている最中、王子が顔をしかめながら言った。

「でも、これしか方法はなさそうだよ」

手元の花を見つめながら、エルミアは答えた。

確かに、こんな小さな花一つで、本当に水中で呼吸が出来るものなのか疑問すぎる。


「私が行けないというのも、不安要素の一つだ」

王子がエルミアに一歩近づいた。

「いざというとき、お前を護ってやれない」


ヤバい!

半径30センチ以上近づいたら、王子のフェロモンにやられてしまう!


エルミアは、自分のすぐ後ろにいたリーシャに抱き付いて言った。

「だ、大丈夫!いざという時は、ここに頼もしい付き人達がいるから!」

王子は、不満そうにはぁと大きなため息を吐いた。

「止めても無駄だろうな…」

それからエルフ三人に向かって、厳しい口調で言った。

「危険だと感じたら、何をしていようとも、必ず戻って来い。いいな」

エルフたちは姿勢を正し、声を揃えて「はい!」と返事をした。



ちょうどその時、トックがこっちに向かって叫んだ。

「みなさん、竜宮の使いが来ました!」

「本当!?」

ウミガメなんて、水族館でしか見たことがない。

しかもそのウミガメに乗って、竜宮城に行けるなんて、ワクワクしない訳がない!


機嫌のいいエルミアを見て、さらに王子は不安が募る。

「何かの宴と勘違いしていないか、あいつは」

「リーシャたちに任せるしかありません」

王子の隣で、グウェンが静かに言った。


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