蒼月の約束
第十九話
竜宮城内は、エルミアは思い描いていた通りの造りだった。
昔テレビで見たお姫様が住んでいそうな古風な屋敷に、床を引きずるほど長い着物を着た女人たちが、エルミアたちが通るたびに丁寧にお辞儀をする。
辺りをきょろきょろ見渡しながら、先を行く女性に着いて行く。
「こちらでお待ちください」
そう言って通されたのは、大きな畳の広間だった。
明るい色で統一された部屋の装飾に、カラフルな魚が近くを泳いでいるのを見ると、まるで夢を見ているような眩しさだ。
その奥には巨大な椅子が置いてあり、その両隣には別の女人が長いうちわを持って待機している。
「乙姫さまの、おなーり~!」
複数の声が響いたと思うと、力強い声が聞こえた。
「そなたたちが、竜宮の使いと来た客人か」
一息いれる隙もなく、数匹の小さな魚を連れた別の女性が姿を現した。
真っ赤な腰まであるウェーブした髪。
透明感のある明るい青いヒレ。
そのヒレには、いくつものお洒落な装飾がなされている。
「人魚だ…」
本で見たことがある。
上半身は美しい女性で半身は魚という、本物の人魚を目の前にして、エルミアはまたもや開いた口がふさがらなかった。
「本物の乙姫さまだ…」
ただ、思い描いていたより巨大だった。
体つきはエルフの三倍はありそうだ。
「客人は久しぶりであるぞ」
人魚は、巨大な椅子に器用に腰かけながら聞いた。
尾ひれが波になびくたびに、装飾品がキラキラと輝く。
「そなたらエルフと見受けるが、一体、この竜宮に何の用じゃ?」
「ある人物を探しております」
未だ人魚に見とれているエルミアの代わりにリーシャが口を開いた。
「ほう」
面白そうに人魚は目を細めた。
「探している者とは?」