蒼月の約束
「お前は、何度死にかけたら気が済むんだ!」
誰かに顔を叩かれて、思いっきり口から水を吐き出した。
ゲホゲホと大きく咳き込む、とようやく空気が肺に入りエルミアは意識を取り戻した。
「あれ、ここ…」
目の前には太陽が落ち始めている、夕焼けの空。
青ざめた顔をした王子と、涙目の三人がエルミアの顔をのぞき込んでいた。
「生きてて良かったです…」
王子より先にエルフ三人が、体を起こしたエルミアに抱き付いた。
「先に帰ったことを一生悔やむところでした」
リーシャが唇を噛みしめながら言った。
「ごめん」
まだ咳き込みながらエルミアは弱々しく謝った。
「あれ…バンシーは?」
「セイレーンは、ミアさまをここに置いて、無事だと分かったら帰って行きました。人前に姿を現してはいけない生き物ですから」
「本名はセイレーンって言うんだ…」
ステキな名前だな、と思っているとポケットに何かが入っているのに気づいた。
「虹色の鱗…」
エルミアが取り出したのを見て、王子が驚いたように目を見開いた。
「入れておいてくれたんだ」
海の方から「ありがとう」って聞こえた気がした。
そのあとエルミアは、コロボックルの集落に立ち寄り、トックに人魚とのラブレターの話をして(トックはかなり恥ずかしかっていたが了承してくれた)、またもや馬に揺られて王宮へと戻った。
一つ目の、精霊の呼び出し道具が手に入った。
疲れ果てていたが、エルミアは心が満足感でいっぱいだった。