蒼月の約束
第二十話
数日は何もするな、との王子の強い命令のせいで何をすることも許されなかったエルミアは、一日の大半を王宮内にあるお気にいりの噴水の側で過ごしていた。
少し前までは、リーシャたちに見張りを頼んでいた王子だったが、彼女たちではエルミアを制御できないと思ったのか、時間さえあれば、常に横には王子がいた。
「あの。リーシャたちに頼むので…」
あまりの気まずさに何度かそう言ったが、王子は首を横に振った。
「しばらくは私が側にいる」
その言葉が、近くにいるグウェンの逆鱗に触れていることを王子は分かっていない。
グウェンが険しい形相で睨んでくるため、生きた心地がしない。
やっとその空気に気づいてくれた王子は、グウェンに飲み物を持ってくるよう頼み、エルミアにしばしの休息を与えてくれた。
グウェンが頭を下げて、飲み物を取りに姿を消すと、エルミアはふうと大きなため息をついた。
「悪いな。長くここで働いているから、ここを護ろうと必死なんだ。分かってやってくれ」
ベンチの隣に座っている王子が言った。
「はい…」
理解するもなにも、グウェンの言い分は正しい。
ただ、あの視線に、いつも命の危険を感じるだけだ。