蒼月の約束
誰かを心配して待つとは、これほどに辛いものなのか…。
自分の部屋から日が沈み始めている空を見て、エルミアは思った。
いつも自分がいかにエルフたちに心労をかけているかと思うと、心が苛まれる。
夜が始まる空を見つめながら、エルミアは呟いた。
「早く帰ってきて、みんな…」
腕に顔を埋めたその時、下の方が急に騒がしくなった。
馬の足音も聞こえる。
「おかえりなさいませ!」
エルフたちが次々に挨拶する声が、大きく窓を開けているエルミアの部屋まで届いた。
エルミアは急いで部屋から飛び出し、疲れてやつれて見える王子、グウェン、リーシャとナターシャを迎えた。
疲れ果てている王子に、今すぐ抱き付きたい気持ちを抑えながらリーシャとナターシャをぎゅっと抱きしめる。
「おかえり。遅かったね…」
声が震えた。
何日もリーシャ達と離れていることがなかったエルミアは、彼女たちを抱きしめられて心の底からホッとしていた。
「遅くなりました」
リーシャは謝罪するように頭を下げた。
「良いニュースと悪いニュースがあるが、どちらから聞く?」
グウェンに外用のマントを渡しながら、王子が青白い顔で聞いた。
「まずは、ご飯を食べて寝て下さい」
こんな状況になっても働こうとしている王子に向かって、エルミアはびしっと言った。
「リーシャもナターシャも、グウェンも。今夜はゆっくり寝て。明日、話そう」
誰ひとり反論する者がいなかったのは、旅が相当過酷だったことを証明している気がした。