蒼月の約束
第三話
(私の人生はここまでだったの…?)
水柱に足を引っ張られたまま、朱音はどんどん水中深くへと引きずり込まれて行く。
(何も聞こえない…。何も見えない…)
ここで終わっちゃうんだ…。
私の人生。
真っ暗闇の中でそう思った瞬間、今までの出来事が走馬燈のようによみがえった。
(こうなるんだったら、満おばあちゃんの予言を聞いておけばよかった。
もっと優しくしておけばよかった…。
お父さんともっと話したかったし、お母さんの手伝いももっと快く引き受ければよかった。
亜里沙には…、いや、亜里沙には十分尽くした気がする。
仕事も、あと少しで成果が出せたのにな…)
下へ下へと落ちて行く。
段々と水の中という感覚さえもなくなっていく。
(高森さんに、勇気出して…挨拶だけでもすれば良かった)
色々考えるたびに、自分の人生にまだまだ悔いが残っているのが分かった。
(もっとやりたいことあったのに。読みたい本もあったし、学びたいことも、まだまだ沢山ある。それに私、まだ…23歳だよ)
朱音は、そこまで考えると、落ちて行く感覚に身をゆだねた。
(みんな、ばいばい…)