蒼月の約束
「こ、これどこに向かってるの~?」
後ろからリーシャたちが続いていると願いながら、馬のたてがみに必死に捕まりながらエルミアは叫んだ。
「もしフキ畑に行きたいのであれば、ナタリーにそう言って下さい」
リーシャの声が聞こえてすぐに、エルミアはしがみついている白い馬にそっと言った。
「あ、あの、フキ畑までお願いします~!」
もちろん馬が何か返答を返すことはなかったが、理解してくれたことは感覚で分かった。
「その調子です」
馬の気持ちが手に取るように分かるリーシャが明るい声で言った。
王子の鞍のおかげで前回に比べて、乗馬はそこまで辛いものではなくなった。
潮の匂いがしたと思った瞬間、馬の走る速度が落ちる。
「この辺でしたね」
いつの間にか気候が安定し、冬用マントが不要に感じるほどの気温になっていた。
四人とも馬から降り、マントを脱いでからコロボックルの集落があるとする方角へ歩き始めた。
「あれ、エルミアさんたち。どうかされました?」
フキ畑の周辺をウロウロしていると、海岸から戻ったのであろうトックが後ろから声をかけた。
自分と同じサイズの貝殻を抱えている。
エルミアはふっと笑みがこぼれた。
「ラブレターは続いているみたいだね」
エルミアの視線に気づいたトックは、恥ずかしそうに顔を赤らめながら言った。
「こういうの初めてなので…」
「きっと向うも喜んでいると思うよ」
エルミアはトックの目線に合わせるためにしゃがんだ。