蒼月の約束
「あ、そうだ。知ってます?」
トックがまたもやエルミアに向けて顔を上げた。
「エルフ宮殿の方では、今夜、光る粉雪が降りますよ」
「え!」
エルミアとエルフ三人が同時に反応した。
「どうして分かるの?」
トックは得意げに言った。
「ぼくの家系は、代々、天候を読むことが出来るのです。
世界中から、天気を予想して欲しいって依頼が来るくらいですよ」
「それは、この世界どこでも分かるの?」
エルミアが聞くと、トックは腕を組んだ。
「読むのが難しい土地もありますが、基本的には」
そして、屈託のないまた笑顔を向ける。
「もし何かあれば言って下さい。
エルミアさんは、今やコロボックルの中で、竜宮城に行った有名人ですから」
「私たちも行ったけど…」
ナターシャが後ろで呟くのが聞こえた。
「はい!なのでエルフの方々も有名ですよ。
これからいらっしゃいますか?
いつでも大歓迎です」
エルミアはしばらく考えたのち、首を横に振った。
「今日は帰るね。早く今夜の天候のことを王子に伝えたいし。また来た時、案内してね」
「はい、もちろんです!」
そう言うと、トックは一生懸命白い貝殻を抱えて姿を消した。
「トックの家系は、天候を読むことが出来るってことは、月の廻りを知るものと何か関係があるのかな?」
馬の場所に戻りながらエルミアが言うと、リーシャとナターシャは同時にかぶりを振った。
「いえ。別だと思います。あの方は、本当に神出鬼没で…」