蒼月の約束
第二十二話
今夜光る粉雪がふるという情報を持ち帰ったので、王子はとても喜んでいた。
そして同時に〈月の廻りを知る者〉と会話が出来ると知って驚きを隠せないようだった。
「何か悪いニュースを聞いたのか?」
夕食後、大広間のバルコニーで一人、光る粉雪が降るのを待っていたエルミアに、王子が後ろから声をかけた。
エルフたちは、自分たちの食事の時間のため全員席をはずしている。
エルミアが王子を見つめると、「ずっと静かだったから」と付け加えた。
王子には知っていて欲しいと思ったエルミアは、口を開いた。
「ローワンが言うには、既に戦いの火ぶたは切られたそうです」
「なんだと?」
さっきまで優しかった王子の瞳が、急に険しくなった。
「女王が何か始めたのか」
「詳しくは聞いていなんだけど…」
そしてエルミアは視線を外に戻した。
「他にも何かあるのか?」
顔をのぞき込むようにして王子が聞く。