蒼月の約束

〈お前の大事な人も巻き込まれる…〉

ローワンの言葉がまたもや頭の中で蘇る。


「…王子は、怖くないの?」

エルミアが尋ねると王子は少し間を置いてから答えた。

「いつかは、決着をつけないといけないことだ。私が終わらせないと」

エルミアの質問に答えてないのをみると、王子にも怖い気持ちがあるようだ。

戦いに巻き込まれる…。


そう自覚した瞬間、怖くなってきたエルミアは身震いした。

あの時、あの蒼月の日、やっぱり帰っていれば良かったのかな…。


しかし、バルコニーの柵にひじをつけて外を眺めている、まるで絵画のように美しいエルフの王子を見ると、今だけでも側にいれることが幸せだと思っている自分がいた。


「お」

その時、王子が反応しエルミアは我に返った。

「光る雪だ」

空を見たまま王子が呟いた。

エルミアも王子から視線を外し、そっちに目を向ける。


「うわあ、キレイ…」

天からキラキラとした粉が舞い降りてくる。

しかし、下に落ちると本物の雪と同じように吸い込まれて消えて行った。

金色に光る粉雪が夜空から降ってくる様子は、今までに見たどのイルミネーションよりも幻想的で素敵だった。


雪が降っているのにも関わらず、真ん丸の月まで顔を出している。


「すごい…」

先ほどまでの不安な気持ちはどこへ行ったのか、目の前の魔法のような美しい光景にただただ息を飲む。


その情景に感動しているエルミアから目が離せない王子がいた。

そして、無意識にエルミアに手を伸ばしかけた時、エルミアが「あっ!」と声を上げた。


「王子!ペガサス!」

もはや興奮しすぎて頬が紅潮している。

「呼んでみよう」

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