蒼月の約束
自分の長所は、大泣きして沢山寝たあとは立ち直れる、というところだと胸を張って言える。
次の朝、エルミアは元気よく起き上がった。
「おはよ~う!」
エルミアの様子を心配していたエルフ三人は驚きを隠せないでいる。
「お、おはようございます」
「いや~良い天気だね~」
妙に明るい様子のエルミアがおかしいと感じたのは、自分たちの思い違いではない。
そうエルフ三人が確信したのは、王子たちと図書館で集まっている時だった。
王子は、何かを吹っ切ったかのように堂々と、エルミアに何かあれば触り、それをエルミアは笑顔でかわすという、不思議なやり取りを繰り出していたのだ。
グウェンの機嫌がさらに悪くなり、空気が微妙になっているというのに、王子はエルミアをそばから離さないようだ。
何かするたびに、必ずエルミアを連れて行くし、エルミアが出かけると言えば自分も着いて行こうとするのだ。
とうとう、堪忍袋の緒が切れたエルミアは王子の目を盗んでグウェンを呼び出した。
「何用でしょうか?」
丁寧に頭は下げているものの、言葉の端々に現れる苛立ちは隠せていない。
エルミアは腰に手を当てた。
「あのね、一番戸惑っているのは、私なの。お願いだから、もっとちゃんと王子を見張って」
それからグウェンの前に人差し指を突き立てた。
「いい?エルフと人間は違うのかもしれないけど、私の世界では好きな人にしか過剰なスキンシップはしないものなの。あれじゃあ、勘違いされても文句は言えないよ」
そう言ってすっきりしたエルミアは、グウェンに背を向けた。
「あなたの忠告は忘れないから、安心して」
そう言い残すと、エルミアは静かに立ち去った。
その場に取り残されたグウェンは、大きなため息を吐いた。