蒼月の約束
「私たちエルフに、ドワーフを恨むものはいないが」
王子が静かに言った。
「お前たちが監禁されたことを許せてはいない」
エルミアはふっと肩の力を抜いて笑った。
「うん、知ってる。ドワーフ村に行くことは否定するけど、ドワーフたちの悪口を言ってるのは聞いたことないもん」
そして未だに掴まれている腕を、何気なく離そうと試みながら言った。
「でも、アゥストリはもう私の大事な友達なの。だから、会いに行くのを止めないで」
一瞬王子の手からすり抜けたと思ったが、すぐに引っ張られてしまった。
そしてその勢いで、抱きしめられる形になる。
「分かった。ただ無茶はするな」
いつもいい香りのする王子の腕の中で、慌てて頷いて見せるが、中々離してはくれない。
心臓の鼓動が止まない。
エルミアは自分を制するので精一杯だった。
そしてここに来て初めて「ぐ、グウェン!」と叫んだ。
すぐにグウェンが入ってきた。
そして、いきなり叫んだエルミアに驚いている王子からすかさず離れ、グウェンに向かって言った。
「だから、ちゃんと見張っててって言ったでしょ!王子も、王子です!そういうのは、好きな人とだけして下さい!」
そして肩をいからせて、部屋から出て行った。
残された二人は突然怒られたことにしばらく呆然としていた。