蒼月の約束
「本当に?本当にそう書いてあるの?」
「そうだ。不思議だよな」
エルミアの脳内を読むかのように、アゥストリは呟いている。
「その昔、生き物を歌で癒したと言われる歌姫エルミアと、女王の呪いを歌で解いた予言の娘エルミア。これは、偶然なのか?」
エルミアは鼓動が早くなるのを感じた。
もし、これが偶然じゃなかったら。
私が女王に召喚された理由はいったいなんだろう…
「西の女王の狙いってなんだと思う?」
テーブルの木目を見つめながらエルミアは言った。
静かになったエルミアを見て、アゥストリは驚いたが、すぐに口を開いた。
「この世界を支配することだろうな」
「私が呼ばれた理由は何だと思う?」
聞きたいけど、聞きたくない気持ちが募る。
アゥストリは首を振った。
「分からん。しかし、予言にはこう書かれていた。その娘は、この世界を救うだろう、とな」
エルミアはテーブルに突っ伏した。
「この前、月の廻りを知る者に会ったのね」
そして顔を上げずにつづけた。
「そしたら言われたの。戦いの火ぶたは、すでに切られたって」
「なんだと?」
王子とおなじ反応を示したアゥストリは声を荒げた。
「一体どういうことだ?」
いきなり立ち上がったので、エルミアは驚いてアゥストリを見つめた。
「何も分からないの。それしか言われてないから。でも…」
「王子が言うには、女王が何か始めたって」
アゥストリがいきなり、外の方を確認しだしたので、エルミアは不安になった。
「どうしたの?」